映画「フィリップ」監督インタビュー「感情が凍り付いた男の孤独にフォーカスしています」
現代のヒーローなのか、アンチヒーローなのか──。ポーランドで、長く発禁となっていた原作の映画化「フィリップ」が賛否両論である。第2次大戦下のドイツで、主人公フィリップはユダヤ人の出自を隠しつつ、ナチス上流階級の女たちを次々に籠絡していく。屈折した復讐劇。
「もっとポジティブに評価されていいキャラクターだと思う」とミハウ・クフィェチンスキ監督(73)はこう言う。
「まわりは自分の親しい人まで殺した敵だらけ。出生も明かせず、怒りと孤独感にさいなまれている。現在のウクライナ移民たちと似ているし、社会から疎外されつらい思いをしている人は日本にもたくさんいるでしょう。そんな背景を考えれば、ぐっと身近に感じられませんか」
──作品を通じて描きたかったのは?
「原作を読み、まさに今の世界がこういうふうだと思ったんです。愛が欠如し、その必要性、憧れはありますけど、その感情を深めていくことすらできない。ネットやSNSの普及によって、世界を深く見る、考えることができなくなっている現代人たち。簡単に洗脳されてしまいそうで、怖くもある。モラル、道徳的観点も必要ですが、それらを外して、映画を見てもらいたいと思います」