映画「フィリップ」監督インタビュー「感情が凍り付いた男の孤独にフォーカスしています」
──孤独な主人公は映画「ジョーカー」のような暴発にかられますね。
「目の前で、殺される必要のない人が殺されたりしている。とてもあってはならないシチュエーションに生きているのです。各国で上映会をすると、私たちのもとに集まって、個人的な話をする観客の姿がありました。移民だけじゃない。彼らは感謝を伝えてくれたんです。自分がひとりじゃないんだ、苦しみに喘いでいるのは。そう思えたというんです」
──それが作品のメッセージなのでしょうか?
「苦境やトラウマから、感情が凍り付いた男の孤独にフォーカスしています。社会に身を潜め、あらがい、何とか生き永らえようとしますけど、どうにもならない更なる苦境に喘ぎます。そして、彼は自分が目指していた感情を自ら破壊することすら迫られる。もともとフィリップはそういう人間ではなく、冷酷でシニカルな人間に狂わされてしまっているんです。そのとき、どうするのか、そのような状況下で何を感じるか、向き合ってみてください」
──フィリップはヒーローなのですか、それとも。
「ヒーローですよ。現代なら、おそらく心理療法士のもとに通い詰めているでしょうけれども」 (聞き手=長昭彦)
■21日(金)から新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほか全国公開。R15+指定。