桂米朝師匠は上方落語の古典として演じられている演目の数多くを掘り起こした
先日、亡くなられた桂ざこばさんが「ちゃーちゃん」と慕い、敬愛し続けた桂米朝師匠。今回はお笑いの世界で仕事をする者として、また、いち落語ファンとして米朝師匠の存在がどれほど上方落語に貢献されてきたか、お話しさせていただけたらと思います。
米朝師匠は人間国宝に指定されたことはもちろん、演芸人で初めて文化勲章を受章し、文字通りの上方落語存亡の機を救った大功労者です。私も漫才作家を始めて四十有余年間に特番などで数回ご一緒させていただきました。番組の構成とともに漫才の台本を書いているとお伝えすると「また、難しいことしてるんやな~。頑張りなはれや」と、米朝師匠から励ましの言葉を頂いたことが今でも忘れられません。
師匠は、上方落語界の復興、底上げ、若手の育成と幅広く功績を残されました。中でも、やり手がいなくなり埋没していた古い噺を「現代語訳」して、演目に復活させてきたことは落語ファンとしては見逃せません。現在、上方落語の古典として演じられている演目の数多くが米朝師匠が掘り起こしたものや、再構成されたものだと聞いています。
読書家でも知られた師匠。書庫には、1万冊を超える蔵書が並び、落語関連、歌舞伎や古典芸能、原語のままの中国の笑い話など、研究者としても一級品の資料を数多く所有されていたそうで、米朝師匠の博識の源になっていたようです。