六本木のゲイバーのドアを開けると健さんと長嶋さんが…
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俺が東映に所属していた時代、会社の看板を背負ったスーパースターが高倉健さんだった。
健さんといえば、真っ先に思い出すのはコーヒー。俺の記憶では1日に必ず13杯飲んでいた。
特に撮影に入る前は時間をかけてゆっくりコーヒーを飲んでいたから、健さんにとっては精神集中の儀式のようなものだったかもしれない。ただ、コーヒーの飲み過ぎで寝つきが悪いのか、朝はからっきし弱い。午前中に撮影がある日は、助監督らが数人で起こしたものだ。それでも起きない。だから、一人が歯ブラシに歯磨き粉をつけて、健さんの口の中に突っ込んでゴシゴシやり始める。それでようやく目が覚めた(笑い)。
「健さん、どうして朝がダメなんですか」
俺が聞くと、健さんは照れくさそうに、
「血圧が低いんだよ」
と弁解してたけど、俺はまるで信じちゃいない。か弱い女子高生じゃないんだから。貧血で倒れた健さんなんて一度も見たことがない(笑い)。