六本木のゲイバーのドアを開けると健さんと長嶋さんが…
健さんのコーヒー好きといえば、こんなこともあった。俺が銀座のホステス2人を連れて、夜中に六本木のゲイバーに行ったときのことだ。勢いよくドアを開けると、男2人が小さなテーブルを挟んで座っている。一人は健さん。向かいの席にはなんと長嶋茂雄さん。これには驚いた。
健さんはすでに酒をやめていたし、長嶋さんも酒はあまり飲まないほうなのかな。しかも、2人が親友同士なのは周知の事実。だから、夜中にコーヒーでも飲みながら話をするのは不思議じゃない。だけど、場所がゲイバーだからさ(笑い)。
でも、よくよく考えてみれば、天下のスーパースターがそのへんの喫茶店で話すわけにもいかないもんな。深夜、静かに話そうと思ったら、ゲイバーくらいしかなかったのかもしれない。
健さんは常にファンの目を意識する人でもあった。スターはこうあるべきだという明確なイメージがあったんだろう。ある夏の日。俺が真っ黒に日焼けして撮影所に行くと、健さんが声をかけてきた。
「辰夫、どうしたんだ。そんな真っ黒い顔して」