知っておきたい「胃ろう」の現実 “拒むチャンス”は一度だけ

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 当初は家族も胃ろうによる治療に満足していたが、徐々に不満を募らせ、2カ月後には「もうこんな姿は見ていられない。早々に何とかしてください!」と非難をにじませるようになった。

「しかし、長期の胃ろうを中止するよう医師に申し入れても、現状ではそう意向は通りません。医師からすれば『医療行為を放棄する』ことは避けたいですし、安楽死問題にも抵触しかねません。また、後になって心変わりした家族から訴えられ、不作為の殺人罪に問われる懸念もあるからです。救急搬送から退院までの期間に胃ろうを拒むチャンスは、現状では医師から『胃ろうを作るかどうか』と聞かれたときだけと考えておいたほうがいい」(山本医師)

 結局、Yさんは意識が戻らないまま胃ろうによる延命治療が3年も続いている。チューブから栄養が補給されているため、顔はふっくらして色つやもいいという。

「胃ろうに対する正解はひとつではありません。だからこそ、もしもの時にどうしたいか、老親や自分の家族としっかり話し合っておくことが大切です。肉親が急に倒れた場合、動揺して頭が真っ白になり、『どんな形でもいいから助かって欲しい』と考える人がほとんどです。いざそうなった時に選択が変わるとしても、事前に話し合っておけば、『こんなはずじゃなかった』と後悔することは減ると思います」(山本医師)

 決して他人事ではないのだ。

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