冠動脈バイパス手術を一度に8箇所行うケースもある
また、バイパスを8カ所つくる場合、バイパスとして使う血管(グラフト)を少なくとも2~3本、場合によっては4本採取しなければなりません。血管が詰まったり狭窄している部分の程度によっては、グラフトの長さが足りなくなるケースもあります。そうした場合、別のところから血管を採取して血管同士を縫い合わせ、継ぎ足してグラフトにする処置が必要です。それだけ、やるべき作業が増えることになります。
心臓手術は、手術時間が長くなれば長くなるほど患者さんの負担が大きくなります。バイパスをつくる箇所が増えれば、その分だけ患者さんに負担がかかるのです。なるべく早く正確に手術を終わらせなければならないので、外科医の技量も求められます。
そのため、何カ所もバイパスをつくることができる患者さん、そして外科医は、ある程度、限られてくるといえるでしょう。
そもそも、8カ所近くバイパスをつくることができる患者さんは、心臓の機能や全身状態がそこまで悪化してはいないため、5カ所くらいにとどめても問題ないといえるくらいの病状であるケースがほとんどです。とはいえ、仮に冠動脈の8カ所が詰まったり、狭窄している場合、すべての箇所にバイパスをつくって血流を確保するのが理想的です。ですから、患者さんの病状や全身状態を考慮して、可能であればすべての箇所にバイパスをつくるべきだといえます。