著者のコラム一覧
名郷直樹「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

かっけ克服の転機になった島薗順次郎のあいまいデータ

公開日: 更新日:

 かっけ栄養不足説の反対の中心で、鈴木梅太郎のオリザニン抽出以降も臨床試験を行わず、かっけ治療の進歩に反対し続けていた東大の医科大学(当時は医学部と言わなかった)の学長青山胤通が1917年に亡くなります。これが転機になったかどうか、証拠はありませんが、2年後の1919年京都大学教授であった島薗順次郎がオリザニンの臨床試験の結果を報告します。

 彼はまず30人のかっけ患者を2つのグループに分け、一方には麦飯を、一方には白米を食べさせて経過を観察します。しかし結果は予想に反して、2つのグループには「著明ナル差異ヲ認ムルコト能ハザリシ」、つまり差はなかったというものでした。

 東大のグループであれば、研究はここで終わりでしょう。しかし、島薗は患者が軽症であったのと、麦飯の量が足りなかった可能性を考慮して、さらに研究を続けます。

 ちょうどその時、京都府男子師範学校でかっけが集団に発生し、その学生患者にヌカを1日1合もしくは茶碗に1杯食べさせたところ、1週間で患者全員のむくみの症状が軽快したと報告しています。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    西武ならレギュラー?FA権行使の阪神・原口文仁にオリ、楽天、ロッテからも意外な需要

  2. 2

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動

  3. 3

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  4. 4

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏の勝因は「SNS戦略」って本当?TV情報番組では法規制に言及したタレントも

  5. 5

    小泉今日子×小林聡美「団地のふたり」も《もう見ない》…“バディー”ドラマ「喧嘩シーン」への嫌悪感

  1. 6

    国内男子ツアーの惨状招いた「元凶」…虫食い日程、録画放送、低レベルなコース

  2. 7

    ヤンキース、カブス、パドレスが佐々木朗希の「勝気な生意気根性」に付け入る…代理人はド軍との密約否定

  3. 8

    首都圏の「住み続けたい駅」1位、2位の超意外! かつて人気の吉祥寺は46位、代官山は15位

  4. 9

    兵庫県知事選・斎藤元彦氏圧勝のウラ パワハラ疑惑の前職を勝たせた「同情論」と「陰謀論」

  5. 10

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇