450人以上の死に寄り添ってきた訪問診療医“自らの死に方”
定年退職を機に外科医から訪問診療医に転身した小堀さん。最初の数年間は患者やその家族に求められるまま、最期を迎える頃合いになると病院に搬送し、生き永らえるための措置をしてきた。ところが何人かの患者をみとるうちに、病院での延命が必ずしもベストとは限らないことに気がついたという。
「病院で積極的な治療を受けて延命するのか、在宅で穏やかな死を迎えるのか、それぞれの最期にはそれぞれの選択があります。訪問診療を通して患者やその家族と長く付き合っていれば、多くの情報を共有しますし、信頼関係も生まれます。そうなると患者や家族の意向を踏まえつつ納得がいく最期を迎えられるように、総合的な判断を下せるようになるのです」
その結果、在宅でみとるケースが増えた。現在は75%が在宅死だという。
それでは小堀さん本人は、どのような最期を迎えたいと考えているのか。450人以上の死に寄り添ってきた経験から導き出した答えはどんなものなのだろうか。
「私自身は、病院にするのか自宅にするのか、最期を迎える場所を決めていません。自分がどのように衰えていくのか、体力を失っていくのかは、まだ分かりませんからね。体の状態がどのように推移していくのかによっても違ってきますから、現段階で計画を立てることはできません。ただはっきりと言えることは、体が動く限りは医師の仕事を続けたいということ。このまま訪問診療に取り組んでいきたいです」