著者のコラム一覧
中川恵一東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

韓国の女優パク・ソダムさんは切除も 甲状腺がんは経過観察でよしの根拠

公開日: 更新日:

 その点で、甲状腺専門病院・隈病院のデータが参考になります。甲状腺がんと診断された2153人を、直ちに手術を受けた974人と経過観察をした1179人に分けて追跡しました。その結果、手術を受けた人も受けなかった人も、甲状腺がんが原因で亡くなったケースはゼロでした。

 超低リスクは1センチ以下で、低リスクは1.1~2センチ以下。ともにリンパ節や遠隔臓器への転移がないものです。

 甲状腺は喉ぼとけの下にあり、成長や代謝に関わるホルモンを分泌。切除すると、ホルモン剤が一生必要で、発声に関わる神経が損傷されるため嗄声(させい=声のかすれ)が問題に。半年ほどで回復するケースもあれば、一生続くケースもあり、無視できません。手術の代償が大きいので、低リスク以下は経過観察が重要なのです。

 韓国では1999年から甲状腺がん検診が広がり、死亡に直結しないタイプの手術が増加。その過剰診断が問題視され、今では甲状腺がん検診の受診者が減り、甲状腺がんと診断される人が減少に転じています。


 しかし、日本では、東日本大震災の原発事故で当時18歳以下の全員に甲状腺検査を行った結果、200人を超える小児甲状腺がんを発見。原発事故で甲状腺がんの増加を関連づける報道が相次ぎましたが、誤解です。死亡に関係ない甲状腺がんを掘り起こしただけで、過剰診断です。

 男性の前立腺がんについても、同じことが当てはまります。過剰診断、過剰治療に注意してください。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    佐々木朗希を徹底解剖する!掛け値なしの評価は? あまり知られていない私生活は?

  2. 2

    江藤拓農水相が石破政権の最初の更迭大臣に?「隅々まで読んだ」はずの食糧法めぐり“逆ギレ誤答弁”連発

  3. 3

    「相棒」芹沢刑事役の山中崇史さんが振り返る俳優人生…地下鉄サリン事件「忘れられない」

  4. 4

    吉幾三(5)「お前のせいで俺と新沼謙治の仕事が減った」

  5. 5

    みのもんたさんが自身のスキャンダルで見せた“類まれな対応力”…明石家さんま、石田純一との共通点

  1. 6

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  2. 7

    大阪・関西万博もう間に合わず? 工事未完を「逆転の発想」で楽しむ方法…識者が皮肉たっぷり提唱

  3. 8

    日本代表FW古橋亨梧の新天地は仏1部レンヌに!それでも森保ジャパン復帰が絶望的なワケ

  4. 9

    維新は予算案賛成で万々歳のはずが…ゴタゴタ続きで崩壊へ秒読み 衆院通過の自民はニンマリ?

  5. 10

    松坂桃李「御上先生」第7話2ケタでV字回復へ 詩森ろばの“考えさせる脚本・演出”はTBS日曜劇場からの挑戦状