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田中幾太郎ジャーナリスト

1958年、東京都生まれ。「週刊現代」記者を経てフリー。医療問題企業経営などにつ いて月刊誌や日刊ゲンダイに執筆。著書に「慶應幼稚舎の秘密」(ベスト新書)、 「慶應三田会の人脈と実力」(宝島新書)「三菱財閥 最強の秘密」(同)など。 日刊ゲンダイDIGITALで連載「名門校のトリビア」を書籍化した「名門校の真実」が好評発売中。

難関医学部を狙うのなら「開成より駒場東邦」のワケ 東大の全学部にも満遍なく合格者

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「医学部を目指す家庭に近年、勧めることが増えているのは東邦大の系列校」と話すのは大手学習塾の進路担当。東邦大傘下の中高一貫校は付属東邦と駒場東邦。この2校から東邦大医学部へ合計で最大25人が内部進学できる可能性がある。

「唯一の付属である東邦高に、より多くの内部進学枠が割り当てられ、毎年20人近くがこの制度を使って医学部に進学。中学受験の段階で、なんとしても子どもを医学部に進学させたい家庭にマッチした中高一貫校といえます」(同)

 一方、付属ではなく系列校の位置づけの駒場東邦から東邦大医学部に内部進学するのは多くて4人程度。わずか1人という年もある。付属東邦に比べ枠はずっと小さいが国公立大医学部入試で強みを発揮している。ここ3年の合格者数は28人、29人、21人と推移。2023年度はやや振るわなかったものの、うち5人が東大理Ⅲ(一般入試合格者97人)だ。この数字は灘(15人)、桜蔭(11人)に次ぐもの。開成や麻布の3人を上回った。

「うれしいの一言に尽きる」と感慨深げに語るのは70年代に駒場東邦に通ったOBだ。都内私立男子御三家(開成、麻布、武蔵)に匹敵する中高一貫校をつくろうと1957年に開校した。「山の手の家庭の子弟が多く、生徒層が重なる麻布に追いつけ追い越せが僕らの時代の合言葉だった」とOBは振り返る。

「偏差値はまだ少し麻布のほうが上だが、大学進学実績ではすでに超えたといえる。私立男子校トップの開成にも並んだ」とまで言い切るのは前出の学習塾進路担当だが、開成の23年度の国公立大医学部合格者数は駒場東邦の1.8倍の38人。

「1学年の生徒数は開成の400人に対し、駒場東邦は230人前後。少数精鋭の体制が機能している。難関医学部を狙うのなら、開成より駒場東邦。私大系に重点をおくなら、内部進学もある付属東邦がベターな選択になってくる」

■医師過剰予測の中でベターな選択は?

 この進路担当が保護者を前にして実際に推すことが多いのは駒場東邦のほうだ。「将来の選択肢が限定されない」のがその理由だ。

 中学に上がる段階で、子どもの職業を医師だけに決め、他の道を閉ざしてしまっていいのかどうか。来年度、中学受験して最短で医師資格を得るのは36年。厚生労働省の試算では33年を境に医師過剰になると予測されている。最も安定した職業とみられてきた医師も、厳しい時代が到来するのは必至なのだ。

「他の学部を狙える余地を残しておく意味で、駒場東邦の長所が生きてくる」と進路担当は強調する。同校は理Ⅲだけでなく、東大の全学部に満遍なく合格者を送り込んでいる。京大、一橋大、東工大、有名私大にも強く、「高2・高3になってからの進路変更も容易。どうしても医学部でなければならないという生徒も減ってきている」と同校関係者は話す。医学部偏重の時代は確実に変わりつつある。



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