【表付き】4月から新型コロナ治療薬の自己負担21万円の恐れも…受診の比重はむしろインフルが上
新型コロナ治療に使われる治療薬への助成が3月末で終了し、4月からは負担割合に応じた全金額を自己負担することになる。コロナ治療費の負担急増で治療や受診を拒否する人も増えるとみられる。さて、どう対応すればいいか。
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新型コロナの治療にかかる費用は当初、検査費用や治療費を含めて全額公費でカバーされた。公費による助成は少しずつ縮小され、昨年10月からは原則、治療薬への助成のみに。それでもいまのところ薬代は1割負担で3000円、3割負担で9000円に抑えられているが、4月からは治療を受けた人が1~3割に応じた負担額を丸ごと支払うことになる。
4月から新型コロナの治療でかかった費用も、ほかの病気と同じように保険制度にのっとって負担するのは通常の仕組みに戻るだけ。ある意味、当然のことだが、新型コロナで使用される薬の正規料金である薬価を知ると、「えっ、ウソ!」と目が点になる人が少なくないだろう。
■国産初ゾコーバは1治療5万円超
新型コロナで通常承認された薬のうち、軽症から使えるのは4種類。たとえば国産初の新型コロナ治療薬として2年前に軽症・中等症向けとして緊急承認された「ゾコーバ」は、治療費への助成を発表したニュースと前後する形で今月5日付で厚労省から通常承認を受けた。用法用量を守って服用すると、回復までの期間が1日短くなるのが効能だ。
気になる薬代は1錠7407.4円。最初の日は3錠、2日目から5日目まで1錠ずつで計7錠飲むと合計5万1851円。3割負担だと1万5555円に上る。これまで9000円で済んでいた3割負担の薬代は、何と6000円超もハネ上がるのだ。
会計で支払うのはもちろん薬代だけでない。診療料や処方料、調剤料、検査費なども上乗せされる。そうしたものをすべて合算すると2万円近くになるのだ。受けた治療の料金をきちんと支払うのは当たり前とはいえ、この高額ぶりには驚かされる。
「昨年10月に新型コロナの薬代が3割負担で9000円になってから、医療費負担の増加を嫌った一部の患者さんには、時々、薬の処方を拒否されることがあります。これからコロナ治療薬の高さがより認識されると、処方を拒否する方が増える可能性はあるかもしれません」
こう言うのは、「米山医院」院長の米山公啓氏だ。糖尿病や高血圧などの生活習慣病の人が、薬代が安いジェネリックのない新薬を処方されると、その1カ月分が2万円前後になることは珍しくない。コロナの薬はわずか5日分でそれに匹敵する金額だが、ほかの薬はもっと高い。
「ラゲブリオ」は持病があるハイリスクの人が軽症から中等症1の場合に使用できる薬で、入院や死亡を30~50%減らすことができる。1カプセル2357.8円で、1回4カプセル。1日2回、5日間服用するのが基本だ。そうすると、1日分は1万8862円、5日分だと9万4312円、3割負担で2万8293円にハネ上がる。
同じくハイリスクな人の軽症から中等症1に使用できる「パキロビッド」は用量が2つあり、高い方だと1治療=5日分で9万9027円。3割負担で2万9708円だ。ラゲブリオやパキロビッドでは、前述の診療料などを含めると支払金額は3万円を超える。シャレにならないだろう。
ダメ押しが「ベクルリー」だ。対象はハイリスクな人の軽症から中等症1までで、注射に使用する薬剤は何と1瓶6万1997円。基本的な投与は初日2瓶、2日目から5日目まで1瓶、合計6瓶で37万1982円ナリ。3割負担で11万1594円とベラボーだ。この薬、肺炎を起こしていると最大10日間注射する。そうすると、68万1967円、3割負担は20万円超だ。
平均株価4万円超えの波に乗るウハウハ株長者はともかく、住宅ローンや教育費などにあせりながら生活する現役世代や年金でほそぼそと暮らす高齢者らは4月からの新型コロナ治療費がグンと重くなることを覚悟しなければならない。