遅筆道文庫・川西町立図書館(山形県)井上ひさしワールドにどっぷり浸れる聖地
こんな空間を、しかも無料で満喫できるのか──。
川西町フレンドリープラザを訪れると、驚かずにはいられないはずだ。ここは劇場、町立図書館、遅筆堂文庫からなる複合施設。その中でも、「ひょっこりひょうたん島」の原作者のひとりで直木賞作家・劇作家の井上ひさし(2010年没)が生涯をかけて集めた膨大な数の蔵書を収めているのが遅筆堂文庫だ。名前は自他ともに認める井上の遅筆ぶりに由来している。
「施設内で劇場は独立していますが、遅筆堂文庫と図書館は入り口が同じで、それぞれ1階と2階に分かれています。遅筆堂文庫の本を2階で読んでも構いませんし、逆もしかり。利用料はございません」
こう説明するのは副館長の遠藤敦子さん。遅筆堂文庫の蔵書数は図書館の6万冊に対し、12万冊(うち閉架図書6万冊)。ジャンルは言語や辞書類、江戸文学、忠臣蔵、宮沢賢治に関する資料等が大きなウエートを占める。それらは付箋がそのままの状態で保たれていて、井上がどこに注目していたのか、どのような視点から本を読んでいたのかが、手に取るようにわかる。
「付箋が付けられているものは書庫に保存していますが、アンダーラインが引かれたものなど一部は閲覧することができます。井上ひさしのファンが日本全国から足を運んでくださり、泊まりがけで3日間連続で来館された方もいらっしゃいました」(遠藤さん)