十和田市民図書館(青森県)中庭の2本の桜は四季の移ろいを感じさせる
青森県十和田市は馬の産地として知られるほか、十和田湖や奥入瀬渓流、1986年に当時の建設省から「日本の道100選」に制定された松と桜のコントラストが美しい官庁街通りが有名だ。
十和田市民図書館はその官庁街通り沿いに位置する。2015年、世界的な建築家・安藤忠雄氏によって新しく生まれ変わった。
大規模施設に珍しい平屋建ての当館で来館者の目を引くのは、何といっても中庭に生える推定樹齢100年超の2本の桜だろう。主査の後村彩香さんが言う。
「安藤先生が『十和田市で愛されていたものを使い、新しい教育の場をつくりたい』と、改築の際にもともと植えられていた桜を囲むように建物を設計されました。既存の自然や風土を生かしながら新たな要素を織り込んでいく建築は青森県南部の伝統工芸『南部裂織』から着想を得たとのこと。館内の本棚は、利用者が横を向けば中庭の桜が見えるように配置しました。官庁街通り沿いの壁面はガラスなので、場所によっては左右の両方に桜を見ることができます」
春は言わずもがな、夏には葉が青々と生い茂り、秋は紅葉、冬には雪が積もる。どこからでも視界に入るそのさまに四季の移ろいを感じずにはいられない。