鬼怒川温泉の渓谷に張り付く巨大廃墟群を探る…残された「バブル遺構」が物語るかつての栄華
業者には解体するメリットなし
なぜこんな光景が広がっているのか。現地事情に詳しい開発事業関係者はこう話す。
「景気がいい時代にホテルなどが造成されましたが、バブル崩壊で経営が立ち行かなくなり廃業したケースが多いようです。廃虚のほとんどは急斜面上にあり通常よりも解体費用が高額になる。土地の売却価格とはとても釣り合わず、解体するメリットがないのです」
廃虚群付近は昼間でも人通りが少なく、夜になると電灯がないため真っ暗に。記者は夜11時ごろに現地を歩いたが、人とすれ違うことはなかった。
「廃虚については地元住民から『景観を損ねる』『危険だ』といった声が寄せられます。市も大変迷惑に感じており、持ち主に適切な管理を呼びかけています。不法侵入の問題も深刻です。こうした犯罪行為に対して、我々は厳正に対処する考えです」(日光市建築部建築住宅課の担当者)
廃虚はまさに「バブルの遺構」ともいえるが、時代の移り変わりを感じさせるのはそれだけではない。中心地にある飲食店の従業員はこう話す。
「景気のせいか、夜にホテルから出て飲み歩く人が少なくなりました。飲食店も一軒また一軒と閉店していき、いつしか夜の街がずいぶん寂しくなってしまった。夜も含めて街が盛り上がっていないと、本当の意味でにぎやかとは言えないですよね……」