日銀“利上げ”もまさかの円安加速…早くも崩れたインフレ抑制シナリオとその後
日銀が異次元の金融緩和政策を大転換して一夜明けた20日の外国為替市場で円相場が急落。昨年11月中旬以来、約4カ月ぶりに1ドル=151円後半まで売られた。対ユーロでも164円台後半となり、2008年8月以来、約15年半ぶりの安値を付けた。
「マイナス金利解除」という日銀の決定は利上げだ。これまでマイナス0.1%だった政策金利が0~プラス0.1%に引き上げられた。日銀が利上げすれば、為替相場は円高方向に振れると解説されていたのに、まさかの円安進行。話が違うじゃないか。どういうことなのか。
「マイナス金利は解除したものの、日銀の植田総裁が記者会見で『緩和的な金融環境を継続』と発言したこともあり、海外の投資家は『当面、日米の金利差は縮まらない』と受け止めた。YCC(長短金利操作)も撤廃し、金融政策の正常化に踏み込んだとはいえ、海外投資家に日本が金融引き締めに転じたという意識はない。急激な円安に振れたのは『早く追加利上げを』という催促相場とも言えます」(金融ジャーナリスト・森岡英樹氏)
現状5%前後の欧米の政策金利と比べれば、利上げしたとはいえ依然「ゼロ金利」の日本との金利差は大きい。低金利の円を調達し、高金利の海外で運用する「円キャリートレード」が続き、円安も続く。
だとすると、期待された円高進行によるインフレの是正は望めない。