「骨太の方針」は強気だが…気になる中小企業の賃上げ・人手不足倒産
東京商工リサーチが6月10日に発表した「2024年1-5月『人手不足』関連倒産の状況」がそれを裏付けている。倒産件数の累計は118件と前年同期の2.1倍と大幅に増加、調査を開始以来同期間最多で初めて100件を超えた。企業規模では小・零細企業(資本金1000万円未満)が約7割を占め、破産が102件と約9割を占めているのである。
「人手不足で受注を確保できず、営業の機会を逸し、業績回復の遅れから事業継続が困難になるケースが増えてきています」と言う同社情報本部担当者が続ける。
「人件費や原材料、エネルギー価格の上昇などのコストアップが相次ぎ、業績回復が遅れ、賃上げ原資を確保できない企業では従業員の退職引き留め、新たな人材確保が難しくなっているため『人材不足』関連倒産はしばらく増える可能性が高い」
骨太の方針で何度も述べられている「賃上げの定着」だが、賃上げが継続される一方で、中小企業の倒産が進むことが危惧されるのだ。その結果、倒産を回避し事業存続のための大手によるM&A、中小企業同士の統合、合併で淘汰される企業が今後増える可能性も指摘される。それは中小企業にとって、今後賃上げを確保できる企業だけが生き残ることにもつながりかねない。