くも膜下出血で早逝「ブラックモンブラン」41歳副社長の夫が遺してくれたもの…妻で竹下製菓社長が告白
「みんなが幸せになる企業にしたい」
竹下製菓はここ数年で、事業拡大に舵を切っている。
「20年に埼玉のアイス製造のスカイフーズと、22年には岡山の生クリームパンの清水屋食品とご縁ができました。父の代から展開していたホテル事業も佐賀市内に一棟のみでしたが、私の代になってから大分の別府市内と福岡の行橋市内に一棟ずつ増やし、現在、3棟のホテルと長崎市内にサウナの温浴施設を運営しています」
父・敏昭さんの代で参入したホテル事業を拡大しているのには訳があると、真由さんは話す。
「父がホテル業を始めたのは、佐賀駅前に集える場所と働く場所を作りたいという思いだったと聞いています。20年以上続く事業なので、主力事業と相互に支えられる一つの柱になればと思っています。またホテルが1棟だけだと、この先建て替えする際に、従業員の継続雇用が難しくなる可能性があります。九州4県にホテルと温浴施設があれば、それが回避できるのと、勤務地に選択の幅が広がります。支配人の枠が複数あれば、キャリアアップや仕事へのモチベーションアップにもつながるのではないかと考えています」
戦友でもあった雅崇さんの存在は、仕事の上でも大きなモチベーションとなっていたという。
「一番つらいのは、夫を相手にもう壁打ちができないことです。私が事業の大枠を描いて音頭をとり、その構想を具体的に詰めて事業化していくのが夫の役割でした。緻密な夫と性格が異なる私の二人三脚がこれからもずっと続くと思っていたので……。生前に夫のいろんな意見、想いをもっと聞いておくのだったと悔やまれます」
ここ数年の規模拡大は、事業の柱を増やして会社をより強靭なものにしていこうと、雅崇さんと練り上げた構想のもと進められたものだった。
「目の前のことを片付けていくことに必死で、気づいたらもう半年が経ちました。乗り越えられない試練は与えられないとよく言いますが、家族や従業員、お取引様やお客様に支えられながら、目の前にある試練をなんとか乗り越えようとするんだと実感する毎日です。『竹下製菓グループに関わるみんなが幸せになる100億企業になる』という夫との目標に向かって着実に歩んでいきたいと思っています」
今年はブラックモンブラン発売55周年という節目で、9月には雅崇さんが遺した新商品が発売される。
「ブラックモンブランのクランチを除いたアイスクリーム『くろしろ君』を発売します。まさにブラックモンブランがひと肌ぬいだ状態で、商品名を命名した夫の最後の仕事となりました」
業務で多忙な生活を送る真由さんだが、合間には、ダイビングやスキーに釣りと、子供たちとの時間を大切にし、子供たちの成長を実感する毎日だという。
(取材・文=西郡幸子/ライター)
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