「事業譲渡後の倒産」が急増する背景…2023年度は前年度比32%増
「特別清算は株主総会での解散決議後の清算手続きで申請します。存続させる事業をスポンサーや受け皿会社への譲渡を前提としたものが多く、倒産前に資産、事業モデル、雇用等を別会社に引き継ぎ、譲渡金を確保した後に倒産するケースが一般化してきています」
事業譲渡後の倒産が増えた要因として、コロナ禍を経て過剰債務を抱えた企業が、債務整理の手続きで債権者と債務者の合意による私的整理が広がり、事業再生の手法が多様化していることが挙げられる。また、負債総額が1億円以上の企業に多いことが最近の特徴だ。先の増田氏が言う。
「一般的な倒産は負債額1億円未満の企業が7割ですが、事業譲渡後の倒産では逆に負債1億円以上が多い。事業を引き継ぐ企業にとって事業資産は多い方が良く、一定以上の事業資産を持つ企業の譲渡に踏み切る場合が多いんです」
経営が行き詰まった老舗企業も事業譲渡後の倒産が増えている。業歴を重ねノウハウや技術など、事業基盤を築いた企業は譲渡の対象になりやすいのだ。
アサヒグループHDはビールをはじめ複数の事業を展開するなかで、不採算部門のアサヒフードクリエイトを売却、外食事業からの撤退でビールを中心とした酒類事業に経営資源を集中させることになる。事業譲渡後の倒産は、経営価値を高め、経営立て直しを可能とする大きなメリットがある。
(ジャーナリスト・木野活明)