船井電機の先行きは不透明に…株式は仮差し押さえ、上田智一社長が不可解な辞任
だが、2010年代以降、中国・台湾メーカーとの競争が激化し、フナイの激安テレビデオをもってしても利益を上げられなくなった。さらに16年にフィリップスの家電事業買収が破談となり、175億円の違約金を支払うことになった。船井電機は特別損失を計上するなど2年続けて赤字に転落。3年間に社長が3度代わるなど、経営が混乱した。
その混乱のただ中の17年7月、創業者の哲良氏が死去。相続した長男の船井哲雄氏(医師、旭川十条病院院長)は、船井電機顧問の板東浩二氏(元NTTぷらら社長)の仲介により、出版会社、秀和システムグループ代表の上田智一氏に経営を託した。上田氏は21年5月に船井電機をTOB(株式公開買い付け)で買収し非上場化、同年7月に船井電機の社長に就いた。
船井電機を買収した上田氏は、業績が悪化していたテレビ事業からの脱却を掲げ、23年4月、脱毛サロン「ミュゼ」を展開するミュゼプラチナムを買収。美容事業を新たな柱に据えた。
船井電機のつまずきは、このミュゼ買収に始まる。上田氏は買収したミュゼを1年弱後の24年3月に売却している。「実はミュゼプラチナムはネット広告会社に対して多額の負債を抱え、船井電機がこれに連帯保証をしていた。この債務の返済が進まず、ネット広告会社が東京地裁に対し、船井HDが所有する船井電機の株式の仮差し押さえを申し立てていた」(大手信用情報機関)というのだ。
船井電機は突然のトップ辞任に、「現在、新たな経営体制がスタートし、経営計画を策定していく段階にある。計画は早期に公表したい」としているが、先行きは不透明だ。