物価上昇指数は2.8%UPでも、生活者の実感は「15%超」…分析リポート担当研究員の見解は?
「23年以降は実際と体感の乖離が拡大し、その差は10%を超えています。理由は、急上昇した米価(前年同月比+28.3%)や、食料品、ガソリンなど消費者が日常的に購入する商品の値上がりが大きいことが要因です」
さらに、「デフレ長期化で時間が経てば商品価格は下がるといった価値観が根付いたことに加え、賃金も上がらなかったため、わずかな値上げにも敏感になってきています」と続ける。
物価高騰の長期化で、消費者の物価に対する意識にも変化が見られる。同研究所調査による消費者の事業者への要望をみると、「多少の値上げは仕方ないが、商品の量や質は変えないで欲しい」というやむを得ない値上げを支持する割合が約6割を占めている。
■8月の実質賃金は再びマイナス
消費者の意識の変化は、人材確保の厳しさやコスト高のなか、企業努力で極力値上げを抑える姿勢が消費者に支持されてきたこと。コスト増や政府の賃上げ要請を背景に、従業員の賃金への還元から適切な価格転嫁もやむを得ないとして、消費者にある程度受け入れられる土壌が形成されつつあることが挙げられる。とはいえ、先の日銀調査では1年前に比べ景況感は「悪くなった」が20%以上増え、現在の暮らしぶりについても、「ゆとりが出てきた」が減少、「ゆとりがなくなってきた」が20%増加しているのである。
この8月の実質賃金は再びマイナスに転じた。物価水準の高止まりが継続している現在、消費に直接つながる賃金の伸びへの期待が大きい。
(ジャーナリスト・木野活明)