著者のコラム一覧
小林佳樹金融ジャーナリスト

銀行・証券・保険業界などの金融界を40年近く取材するベテラン記者。政界・官界・民間企業のトライアングルを取材の基盤にしている。神出鬼没が身上で、親密な政治家からは「服部半蔵」と呼ばれている。本人はアカデミックな「マクロ経済」を論じたいのだが、周囲から期待されているのはディープな「裏話」であることに悩んで40年が経過してしまった。アナリスト崩れである。

「粉飾」倒産が過去最多更新へ…大胆かつ巧妙な手口がバレる理由は“ささいなボロ”から

公開日: 更新日:

 その粉飾の手口は想像を絶する大胆なもので、「取引銀行それぞれに対し、異なる借入金明細書を作成して融資を受けていました。借入金総額もまちまちで数字もでっち上げでした」(大手信用情報機関幹部)という。「銀行取引数も対外的にはメガバンクなど3~4行と公表していましたが、実際は地銀や信金などを含め約50行の金融機関から融資を受けていた。しかも借入額も当初40億円と説明していましたが、フタを開けてみると350億円もの融資を引っ張っていた」(同)というから驚かされる。

 巧妙な粉飾の手口がバレてしまうのはなぜか。そのキッカケは「ささいなことからボロが出るケースも少なくない」(地銀幹部)とされる。例えば融資先企業の周年記念や新規出店のお祝いに銀行が贈った花輪から露呈する場合もあるという。「企業は融資を受ける際、融資申請書に取引している銀行名を記入するのですが、そこに記されていない銀行から花輪が贈られているのでおかしいと思い、当該銀行と情報交換すると、異なる決算内容が提出されていることが判明した」(同)というのだ。競合する銀行間では取引先企業の情報交換が手薄。その穴を利用した粉飾隠しというわけだ。

 帝国データバンクの調査によれば、24年1~9月の「粉飾」倒産は前年同期比16件増の74件と、3年連続で前年同期を上回った。24年通年でも年間最多件数(19年84件)を更新する可能性が高い。銀行を騙す悪徳企業は後を絶たない。

■関連キーワード

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • トピックスのアクセスランキング

  1. 1

    大阪万博チケットさっぱり売れず…1100万枚完売しないと赤字に、損益分岐点1840万枚なのに販売済み約744万枚

  2. 2

    大阪万博のシンボルにくすぶる“パクリ疑惑”…リングの愛称は「パクリング」でエエんちゃう?

  3. 3

    2025年は企業倒産・自己破産が社会問題化する恐れ…アンケートで「増加」予測63%の衝撃

  4. 4

    焦る国民民主・玉木代表がポロリ明かす…「103万円の壁」問題決着へ見えてきた“妥協額”は150万円

  5. 5

    世耕弘成氏が自民裏金の全容を知るキーパーソンに浮上 参院政倫審で「指示を受けた」の証言相次ぐ

  1. 6

    動かぬ植田日銀 追加利上げ見送りで再び円安「1ドル=160円」到来確実…1月も動けぬ恐れ

  2. 7

    犯罪成立の公算大? 疑惑の兵庫県知事選、斎藤元彦知事×メルチュ折田社長×立花孝志氏に迫る“立件Xデー”

  3. 8

    自民“前裏金議員”亀岡偉民氏 現金バラ巻き失笑釈明とお家事情…公選法違反で年内立件へ

  4. 9

    斎藤元彦・兵庫県知事にくすぶり続ける公選法違反疑惑…渦中のPR会社メルチュの「請求書」と「見積書」で違う印影が

  5. 10

    「粉飾」倒産が過去最多更新へ…大胆かつ巧妙な手口がバレる理由は“ささいなボロ”から

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    西武再建に“身売り”という選択肢は?《今の球団上層部は野球を知らず興味もない》悲惨な現状

  2. 2

    中居正広“女性トラブル報道”で…ソフトバンクがテレビ局にCM差し替え通達情報 同社に見解を聞いた

  3. 3

    巨人元バッテリーコーチがFA甲斐拓也獲得を悲観…「人的補償で未来の大切な戦力を失いかねない」

  4. 4

    渡辺徹さんの死は美談ばかりではなかった…妻・郁恵さんを苦しめた「不倫と牛飲馬食」

  5. 5

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  1. 6

    中居正広“9000万円トラブル”で番組窮地…「今でも許せない」告発女性が反撃の狼煙

  2. 7

    松本人志は勝訴でも「テレビ復帰は困難」と関係者が語るワケ…“シビアな金銭感覚”がアダに

  3. 8

    佐々木朗希の「独りよがりの石頭」を球団OB指摘…ダルやイチローが争奪戦参戦でも説得は苦戦必至

  4. 9

    佐々木朗希の「暇さえあれば休む」スタンスをチームのために体を張る大谷翔平は良しとするのか

  5. 10

    女優・吉沢京子「初体験は中村勘三郎さん」…週刊現代で告白