韓国で突然起こった“大統領クーデター”で再注目…日本の改憲派が訴える「緊急事態条項」の是非
ドイツの「ワイマール憲法」も、中央政府の州政府への介入を規定した「大統領緊急令」が濫用された
国家権力の濫用につながりかねない今回の「非常戒厳」と近しいのが、自民党などが憲法改正で求めている「緊急事態条項」だ。
憲法改正の実現を目指す自民の議員連盟がまとめた憲法改正の条文案には「自衛隊の明記」のほか、「武力攻撃や大規模な自然災害、感染症のまん延などで国民生活に甚大な影響が生じる場合に内閣が緊急事態を宣言し、衆議院選挙などの実施が困難な状態になった時には議員任期の特例を設け、延長できるようにする」とした「緊急事態条項」が盛り込まれている。
改憲を訴える保守層は「前提は武力攻撃や大規模な自然災害、感染症のまん延などで国民生活に甚大な影響が生じる場合だから問題ない」というが、過去を振り返れば最も民主的と言われたドイツの「ワイマール憲法」も、中央政府の州政府への介入を規定した「大統領緊急令」が濫用された揚げ句、「全権委任法」がつくられ、ヒトラーの独裁政権が誕生するきっかけとなった。
「小さく生んで大きく育てる」のが自民の常套手段。いったん憲法に盛り込まれたら、時の権力者がどう使うのか分からない。立憲民主党や共産党などの野党側が「国家権力の濫用と独裁につながる」として、「緊急事態条項」の創設に反対しているのはそのためだ。
隣国の韓国で起きた今回の事案はまさに「他山の石以て玉を攻むべし」と言っていいのだが、なぜか「真逆の反応」をしているのが日本の維新の会の馬場伸信幸・前代表だ。
馬場氏はX(旧ツイッター)で、韓国の戒厳令を伝えるニュースを引用、こう投稿していた。
《これ日本でやったら大変なことになるでしょうけど一体何が起こっているのか?わかりませんね。ただ韓国で起こることは日本でも起きる可能性があるということを自覚しないといけません。憲法改正で緊急事態条項を整備すべきです。》
日本で起きる可能性があるからこそ「緊急事態条項」の整備には慎重かつ抑制的であるべきだろう。SNS上でも《馬場さん、結論が違う》《緊急事態条項の本質を理解しない馬場さん》などとツッコミが入っていたのも無理はない。
◇ ◇ ◇
自民党などが「機は熟した」として訴える憲法改正。●関連記事【もっと読む】で『小泉進次郎氏のトンチンカンが止まらない!「大学に行くのがすべてではない」「改憲はファストパス」まで飛び出す始末』【さらに読む】で『高市早苗氏の猛追に旧統一教会が見え隠れ…熱心な信者がXで「サナエ一択」を大拡散』を取り上げている。