恥しのび井村監督再登板に賭ける 日本シンクロの深刻度
「これで日本は再び強くなりますね」
中国のシンクロ関係者は、こう口を揃えているそうだ。
ロンドン五輪では初のメダルなしに終わった日本のシンクロ。今年から再建を託されたのが、04年のアテネ五輪後に日本代表ヘッドコーチを退いた井村雅代氏(63)だ。「日本シンクロの母」と呼ばれる井村氏は、五輪競技になった84年大会のデュエット銅から、00年、04年デュエット銀、96年チーム銅、01年世界選手権デュエット金など、日本に数多くのメダルをもたらした名指導者だ。アテネ後は指導の場をシンクロ後進国の中国に移し、北京とロンドン五輪で3つのメダル獲得に貢献。その手腕は世界のシンクロ関係者から絶賛された。
■中国では「つくり笑い」から指導
あるスポーツ紙の記者が言う。
「井村さんが中国代表のコーチになった時、最初に教えたことはつくり笑いだった。数年前まで中国のデパートに行くと、例えばトイレの場所を聞いても女子店員は雑談をやめず、アゴでトイレの方向をさすような国でした。シンクロは表現力重視の競技ですから、笑いたくなくても笑いなさいと鏡の前で笑顔の練習をさせたのです。そんな低レベルの中国選手に北京五輪で初のメダルを取らせた。その後、井村氏は日本の指導者に復帰する気持ちもあったようだが、<再び井村王国にしたくない><敵国を強くした指導者だから>などの理由から声がかからず、再び中国に戻った。シンクロの日本代表は外国人の振付師を呼んでも結果が出なかったし、リオ五輪の出場さえ危うくなった。シンクロ幹部は恥を忍んで井村さんに頭を下げた格好です」
近年は日本人が能力不足で外国人指導者に代表チームの指導、強化を依頼する競技も増えている。シンクロは井村マジックにかけたわけだが、秋のアジア大会、W杯でどんな結果を残すのか注目だ。