<第5回>社会人の野球部壮行会で父と母は知り合った
野球部にいた徹と知り合ったのは入社1年目だった。
「女子は50人くらい新人がいました。野球部は社を挙げて応援していましたからね。当時はナイターでしたので、試合は6時くらいから始まっていたと思います」
と回想する加代子を引き取って、徹がこう言った。
「新入社員の男子は応援部、女子はチアガールのようなものをやるのが義務付けられていたのです。で、結団式というか、集まりの中で知り合いました。応援される方と応援する方で。結団式とか壮行会とか、酒の席があったりして、そこで、です。当時、僕は入社2年目でした」
徹の勤務先は、厳密に言えば三菱重工横浜のグループ企業だった。野球で入社した選手は半分くらい、そこに振り分けられていた。その中の総務部のようなセクション。
「仕事は午前中の3、4時間くらい。ワープロを打ったり、コピーを取ったりでした」(徹)
午後からは野球部の練習に明け暮れる毎日だった。
ほぼ主力に近い形でプレーするようになった徹はやがて、挫折を味わうことになる。