<第19回>監督の後ろでボソボソとつぶやいた相手選手の特徴

大谷の通った岩手の水沢南中学校野球部が、あるとき練習試合に出掛けた。
大谷は野球部に所属していたものの、一関シニアに通っていたため土日の練習は免除。その日はたまたまシニアの練習がなかったのか、練習試合についてきた。試合には出ず、ベンチの後方で控えの選手たちと応援していた。
試合が中盤に差し掛かったころだ。ベンチの最前列にいた監督の太田和成(38)はふと、自分の後ろでだれかがボソボソとつぶやいているのに気付いた。
「このバッターは前の打席でサードゴロ。強引に引っ張るタイプだから、打球は三遊間方向……」
声の主は大谷だった。大谷の中3時の担任で国語科教諭、3月まで青森の浪打中学校に勤務していた太田が、当時を振り返ってこう言う。
「わたしの後ろでね、つぶやくんですよ。『次はファーストですよ』とかね。スゴいなと思ったのは、このバッターは前の打席でどうだったかというのが全部、頭に入ってるところなんです。スコアブックを見て確かめると、ああ、そうだと。自分でスコアを付けているわけじゃない。後ろに立って見ているだけなのにです。それでいて前の打席がセカンドゴロだったから次はどうとか、分析している。わたしなんて監督なのに忘れてる(笑い)。各打者の打席の内容まで全部、インプットしているのがすごいと。(プロになった)いまもそうやってやっているんだろうなぁ、って」
たまたま野球部の練習試合についてきただけだから、相手チームを見るのはもちろん初めて。にもかかわらず、
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