他競技に前例 男子マラソンは「リオ派遣せず」がカンフル剤
誰が出ても日本のメダルは無理……多くの人がそう思っているのが、リオ五輪の男子マラソンだろう。
6日のびわ湖毎日で、男子は代表選考3レースが終了。陸連設定記録の2時間6分30秒を突破した選手はいなかった。しかも、3レースの日本人最速は、福岡の佐々木悟(30)が出した2時間8分56秒。設定記録より2分半近くも遅かった現実を、陸連はどう受け止めているのだろうか。
設定記録とは、「そのくらいのタイムで走らないと世界で戦えない」ということで陸連が決めた記録だ。それより2分半から3分近くも遅ければ、メダルはおろか入賞さえ厳しいことは容易に想像できる。
スポーツライターの工藤健策氏は、「男子マラソンはリオ五輪の代表派遣を見送るという選択肢もある」と言って、こう続ける。
「選考レースを走った日本選手からは、絶対に優勝するぞ、設定記録をクリアするぞといった気迫はまったく伝わってこなかった。外国の招待選手より後ろの集団で、日本人の1位になろうとして皆で牽制、駆け引きをしている。記録を抜くかもという期待感はなく、見ていて本当に情けなかった。こんなレースでは選手は成長しない。例えば水泳は、派遣標準記録を突破できなければ五輪の代表になれない。男子の柔道は14年世界選手権で不甲斐ない100キロ級選手の派遣を初めてやめた。その階級の選手たちは屈辱だったでしょう。でも、それが刺激となり翌年の世界選手権100キロ級で羽賀(龍之介)選手は金メダルを取った。派遣見送りというのは暴論ではなく、次につながる例もあるのです」