元選手の肩書捨て…伊シェフで再起した元ドラ1投手の挑戦
前向きに修行に取り組み、シェフとしての技量は日に日に上達。その甲斐あって5年後の2010年8月、自由が丘に念願だった自らの店をオープンすることになったが、その数日前に“試練”がおとずれた。
「店の内装はプロに任せた方がいいと思い、『料理で勝負できる落ち着いた雰囲気のお店にしてください』と、すべてを任せていたのです。が、できあがった内装はイメージと違い、まるで明るいカフェ。コンサルタントは、『元野球選手の店なので軽い感じで立ち寄れる店がいい』と話してましたが、私の中ではこの時点で『これじゃ絶対にダメだな』と」
■オープン8カ月で「閉店危機」
案の定、お客さんは「カフェ」感覚だった。料理を売りにしたのに、大半はお茶気分で来店し、経営は徐々に悪化。オープンから8カ月で資金も底をつき始めた。店を潰すことも脳裏をよぎったが、簡単には後戻りできなかった。
「これまでの努力が水の泡になる。自分自身で納得する店をもう一度作らないと」
水尾さんは融資に応じてくれる金融機関をやっと見つけ、その資金を頼りに今度は自らの手で店を改装。イタリア料理にふさわしい雰囲気に仕上げた。11年4月に再オープンした現在の店、「トラットリア・ジョカトーレ」だ。