川淵三郎氏が力説 「有明アリーナは黒字経営確実」の根拠
最近、川淵三郎氏の周辺が騒がしい。自らが設立に尽力したプロバスケットボール、Bリーグの開幕は結構、盛り上がって話題になったし、と思ったら、モメにモメている東京五輪の会場についても、記者会見で吠えた。サッカー日本代表のふがいなさにも内心、カリカリしているのではないか。で、あれやこれや、話題の主にホンネを余すところなく語ってもらった。
■都政改革本部は有明アリーナの成長性も意義も考えていない
――先月、川淵さんは東京オリンピックのための施設、有明アリーナの建設を継続するよう、提言しましたね。
先日、サッカー、ラグビー、バスケットなど13の競技団体が加入する日本トップリーグ連携機構の会長として、多くの競技団体の総意をもとに記者会見を開きました。小池都知事のブレーン、都政改革本部の人たちは有明アリーナ(1万5000席)をつくるに際して、意義と成長性をまったく考えていない。単に、予算を削ればそれでいいと思っているんじゃないか。あまりにおかしいので、提言したんだよ。
――都民の大半は「大きな箱モノをつくったらオリンピックの後、活用されずに赤字が膨らむのでは」と懸念していますよ。
そんな心配はまったくないと断言できる。東京には体育館はあるけれど、多目的に使えるアリーナはないに等しい。東京体育館、国立代々木競技場はアリーナではなく体育館だよね。体育館は観客のことを考えて設計されているわけではないから、トイレが少なかったり、不便が多々ある。五輪会場としても、今後のイベント会場としても魅力がない。その点、計画されている有明アリーナは多目的アリーナなんだ。五輪ではバレーボール会場だけど、バスケット、ハンド、バドミントンなど主要な大会の会場に使えるし、その後はライブエンターテインメントにも使える。コンサートに利用することで黒字経営は確実なんだ。
――横浜アリーナを改修するというプランもありますよね。
横浜アリーナ(1万7000席)を代替に使うというプランを聞いたけど、実情を調べていないと思う。あそこは昨年、スポーツのイベントとして使われたのはたった1日しかなかった。残り317日はすべてライブエンターテインメント。しかも、スポーツイベントといっても、中身はマーチングバンドフェスティバルだった。音楽のイベントでスケジュールはいっぱいなんだ。コンサートプロモーターズ協会の中西(健夫)会長からは「川淵さん、横浜アリーナを五輪に使われたら、ライブをやるところがなくなる。ぜひ、有明アリーナを建ててほしい」と言われたよ。
――しかし、有明アリーナは招致時に176億円だった建設費用がいまは404億円に増えると推計されています。都民はコンパクトな五輪を望んでいるのではないか。そもそも招致の時のキャッチフレーズがそうでしょう? そこが曖昧になっているのではないか、という思いはあるのではないですか。
それは同感だね。ただ、招致時の数字は建物本体だけの建築費だけなんだ。周辺の整備費用、警備費用などはまったく入っていない。
■東京にはマディソン・スクエア・ガーデンのような施設が必要
――そうなんですか。
当時のIOC幹部が立候補した都市に対して、予算を提出する時には、「建物本体だけにしてくれ」と通達したらしい。だから、ロンドン五輪の予算も当初、8000億円だったのが2兆円に膨らんだ。東京の数字が膨大になったのも同じ理由からなんだ。私は必要のない経費はどんどん削るべきだと思う。小池都知事には粛々とカットしていただきたい。しかし、有明アリーナは先行投資です。大きくなって戻ってくるお金なんですよ。
ニューヨークにマディソン・スクエア・ガーデンという多目的アリーナがあります。バスケット、アイスホッケーのプロチームのホームアリーナで、プロレス、ボクシングなどのイベントにも使う。大物ミュージシャンのライブもある。年間、400回のイベントが行われている。それは最初から多目的アリーナとして設計され、ボタンひとつでアイスリンクがバスケットコートに変わるからです。トイレだってたくさんあるし、観客席から見やすいようになっている。そういうところが東京にあれば、誰もが「じゃあ、見に行こうか」という気持ちになりますよ。プレーヤーだって、体育館ではなく、設備の整ったアリーナで大勢の観客を前にやりたいと思うでしょう。
――都政改革本部の調査員は9月29日の会議で「国内のバレーボール、バスケットボール、ボクシングなどは2000~3000席で十分」と発言しています。
許せません。現状を知らないスポーツマインドがない人の発言だね。だって、どんな種目であれ、大勢の観客が見に来るからプレーヤーは頑張るんだよ。ちゃんとした施設をつくれば観客はやってきます。そして、施設と大勢の観客がプレーヤーの力を引き出す。そこがわかっていないんじゃないか。