疲労の表面化はこれから 失意の侍Jを襲うWBCの“後遺症”
WBC球はプロ野球の球よりも大きくて滑るため、ボールが上ずりやすい。低めに投げようとするあまり、いきおい指先に力が入って前腕や肩肘に負担をかける。
しかも、練習で投げるのとは訳が違う。ミスが許されない一発勝負の実戦で、半月近く投げ続けるダメージは計り知れない。中には松坂のように、無理を押して投げ続けた投手がいないとも限らないからなおさらだ。
精神面の疲労もハンパじゃない。
例えば米国代表にとって、WBCはあくまでレギュラーシーズンに向けた調整の位置付け。そこへいくと日本代表は日の丸を背負ってフルスロットル。テレビ視聴率が25%を超えた日もあり、WBCはいまや一大イベントでもある。ミスをしようものならマスコミに戦犯扱いされるのが常。選手たちは嫌でも大会にピークをもってくるような調整を強いられる。
■イチローは出血性の胃潰瘍に……
象徴的なのが09年の2回大会に出場したイチロー(現マーリンズ)だ。
練習試合から極度の不振に。大会に入ってもそのバットは湿りっ放しだった。決勝の韓国戦こそ決勝打を含む4安打で優勝に貢献したものの、大会中のストレスがたたって出血性の胃潰瘍を患った。自身初の故障者リストに入ったほどだ。今年でメジャー17年目を迎えたイチローが、故障者リストに入ったのは後にも先にもこの一度だけ。WBCにおける精神面の負担がいかに大きいかが分かる。