出世より相撲道を追求 ベテラン嘉風は上位陣泣かせの職人
「確固たる信念を持った力士。あえて言うなら、相撲職人でしょうか」
ある相撲記者が言う。
35歳の大ベテラン。相手の懐にもぐり込むことに長けており、武器は角界でも有数の反射神経。時にはフェイントさながらの動きで相手を翻弄する相撲巧者だ。
それでも最高位は関脇止まり。それも昨年の1、3月で2場所務めただけに過ぎない。
相撲人生の大半を平幕で過ごしているわけだが、冒頭の記者は「どうも出世欲がないのか……」と、こう続ける。
「出世したくない力士などいないとは思うが、嘉風に限っては、それがなかなか見えない。本人は『星勘定を気にして相撲は取ってない』と話している。確かに『一日一番』は力士の常套句だが、嘉風は本気でそう思っている。嘉風が目指しているのは、勝っても負けても納得のいく相撲。勝敗は結果に過ぎない……という信念です。勝ちたい欲を抑えて、内容に徹するのは難しいが、嘉風はそれを昔から実践している。負けたからといって、途端に口が重くなるようなこともありません」