CS初戦でベイを完封 広島・薮田和樹を開眼させた母の献身
「制球が課題でしたが、今季は制球を乱して降板したとしても、次の登板でしっかり修正できていた。球に力があるのでストライクを置きにいったり、ストライクゾーンの四隅を狙いすぎなくとも、ファウルでカウントを稼げるようになったことが大きいと思う」
■母がオーナーに直接売り込み
薮田の今があるのは、女手ひとつで育ててくれた母・昌美さんのおかげだろう。幼少期に両親が離婚。昌美さんは地元の広島でタクシー運転手をしながら、一家を切り盛りした。広島の球団関係者が言う。
「薮田が亜大時代のこと。お母さんが業務中にウチの松田オーナーを客として乗せたことがあるそうです。すぐにオーナーだと気づいたお母さんは、『息子が東京の亜細亜大学でピッチャーをやっているんです。速いボールを投げます。ぜひお願いします!』と売り込んだ。これもなにかの縁だと思ったオーナーが『一度、亜細亜へ行って見てこい』とスカウトに指令。結果的にこの売り込みがプロへの道を開くことになったそうです」
大学時代は右ヒジの疲労骨折もあり、大学3年でようやく公式戦デビューするも、登板はわずか2試合だった。そんな投手を14年ドラフトで2位指名する広島に、見る目があったというしかない。