「パパが一緒じゃなければ」EA入りに際しで母親が言った
張本は小学4年で既に県内敵なしだった。それでも、小学3年のときに地元紙の片隅に紹介されたくらいで、マスコミが騒ぎ始めたのは、小学5年の全日本ジュニアで初勝利を挙げたあたりから。
「水谷隼君が来て指導をしたこともあった。それが瞬く間に追いついて、卓球協会の対応もその速さには追いつけなかった」
仙台市卓球協会の鈴木伸一事務局長はそう話すが、成長に合わせる環境整備に、両親は散々悩んだ。張本が結果を出し始め、卓球協会の評価も上がるうちに、2013年9月、東京オリンピック開催が決まる。仙台は子供の教育にうってつけでも、世界の情報からは遠い。かといって、東京に出すことは、勉強か卓球かの選択では収まらない問題だった。
日本オリンピック委員会(JOC)の傘下に、JOCエリートアカデミー(EA)が設立されたのは2008年だ。特に卓球とレスリングを強化種目として、全国の中高校生の中から突出した素質の運動選手を選抜して、東京・北区の味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)で寝食を共にして指導を受けさせるシステムだ。