オリ金子に思う “頭髪推移”に似たベテランエースの落日
だが、金子はそういう短絡的な同調圧力に屈するどころか、どこかそれをあざ笑うかのようにしながら、己の道を鼻歌まじりに歩いているようなところがあった。それでいて、最多勝2回の他に最優秀防御率や沢村賞、MVPなど数々のタイトルに輝く、球界を代表するエースでもあった。
先ほどから文末を「あった」と過去形にしているのは、今季の金子があまりにパッとしないからだ。開幕からここまで6試合に先発して、いまだ勝ち星なしの4敗。防御率も4点台後半と内容も芳しくない。昨年は12勝を挙げたものの、防御率は3年連続3点台にとどまっており、かつてのような圧倒的な投球は鳴りを潜めている。もともと故障が多かったことに加え、年齢も早いもので34歳。もしかしたら、投手としての最盛期を過ぎてしまったのかもしれない。
これはもう当たり前のことなのだが、どんな一流投手でも年齢とともに衰えはやってくる。松坂大輔のように落ちるところまで落ちきってしまえば、あとは開き直って復活を期すのみだが、金子のような下り坂の初期段階には重苦しい切なさを感じてしまう。衰えたあとよりも、衰え“かけている”ときのほうが、人は目を背けたくなるのだろう。なんとなく男性の頭髪推移にも似ている。
と思っていたら、阪神の能見篤史が11日の広島戦で4回9失点と大炎上し、12日に一軍登録を抹消された。能見も今月で39歳になる。ベテランの落日は実に切ない。