炎天下の東京五輪マラソン 専門家が懸念する腎臓ダメージ
体は体温を上げたり(熱産生)、下げたり(熱放散)して、適度な体温を保っている。気温が高ければ汗をかき、蒸発することで体温調節しているのだが、夏の東京は朝7時でも気温が30度以上まで上がり、しかも湿度が高い。汗をかいても蒸発しにくいので、体温が下がりにくい。
マラソン選手にとっては最悪のコンディションだ。
「体温が上がった状態で走り続けることも大変危険ですが、前述したように大量の汗をかくことで体内の水分や塩分が減ります。脱水症により血液が濃縮され、循環血液量が減少するので、脳梗塞、心筋梗塞の発生にも注意が必要です。循環血液量が減少すれば内臓全般の働きも鈍る。腎臓に関して言えば、血液をろ過して尿を作り、水分調節も行っていますが、機能が低下すると尿が出なくなり、急性腎障害になります。老廃物が血液中にたまると、重い症状の場合は人工透析が必要になります。腎臓障害はマラソン選手にとっては致命的といっても過言ではない。本当に心配です」(前出の澤井氏)
88年ソウル、92年バルセロナと、五輪男子マラソンで2大会連続4位の中山竹通氏はかつて本紙の連載で、「2020年の東京は35度の炎天下。現役でなくてよかったです」と語っていた。
真夏の東京でフルマラソンとは、やはり狂気の沙汰だ。