10勝5敗のどっちつかず ビリケン稀勢の里の不思議な存在感
8場所連続で休場して、周りからは決死の覚悟で出場するだろうといわれていた稀勢の里が、決死の覚悟だかそうでもないんだかよく分からない表情のまま、10勝5敗で秋場所を終えた。これが12勝なら「お、来場所復活だ!」となろうし、8勝なら「ちょっとダメかもよ」となろう。
10勝! このどっちつかずはナンダ? 稀勢の里の存在意義がだんだん出始めた記念すべき場所として記憶されるかもしれない。強いんだか弱いんだか分からねえ。今場所7連敗で1勝もしてない力士にほんの2突きで押し出されて初白星を差し上げちゃったときに、向正面でテレビ解説してたどうたら親方が、「今の横綱じゃ歯が立ちませんねえ」と言った。今場所全敗の力士に歯が立たない横綱っているのか!
いるんだ、稀勢の里。
何とか勝ち越した日に(余裕ぶっこいた)白鵬に「勝ち越せてホントよかった」と言われた。ライバルである横綱に勝ち越しを喜ばれる横綱っているのか!
いるんだ、稀勢の里。
ガタイは立派なんだが、ケガして以来、相手を吹っ飛ばすほど強いかっていえば、立ち合いと同時に腰が浮いて吹っ飛ばされる。でも……なんだか笑ってる。ヤケになって親方のおかみさんを突き飛ばしたり、酒癖悪くて素人衆をぶん殴ったり、猫だまし、張り手、ダメ押し、勝ってなんぼってほど地位や名誉に執着がないくせ、どこか人好きがする。負けて花道を引き揚げりゃ、どうしてあげればいいんだろうねえ? とファンはペシペシ体を触れる。