著者のコラム一覧
山田隆道作家

1976年、大阪生まれ。早大卒。「虎がにじんだ夕暮れ」などの小説を執筆する他、プロ野球ファンが高じて「粘着!プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。各種スポーツ番組のコメンテーターとしても活躍中。

白髪イチローの衰えた姿に身震いするような色気を感じる

公開日: 更新日:

 現在、日本凱旋中のイチローを見ていると、いろいろな感傷が込み上げてくる。

 1994年に衝撃的な大ブレークを果たしたオリックスのイチロー、振り子打法のイチロー、200安打のイチローもすでに45歳だ。

 ご承知の通り、プレーヤーとしてのイチローはとっくの昔に盛りを過ぎており、今は過去の偉大な功績に敬意を払われつつ、辛うじてマリナーズのユニホームをまとえている状態だ。白髪が目立つ頭髪、生え際の後退、少し小さくなったように見える肉体、そしてプレシーズンマッチとはいえ0割台の打率。かの天才イチローの現在地は45歳としては当然なのだが、これを寂しいと感じるファンも多いことだろう。「こんなイチローは見たくない」と言う人もいるかもしれない。

 しかし、私はそんなイチローこそ見たいと思ってしまった。衰えたスーパースターの姿をこの目にじっくりと焼き付けておきたい。

 かつては走攻守すべてにおいて球界のトップに君臨し、涼しい顔で何度も超人的なプレーをやってのけたイチローが、今はすっかりおじさんになって多くのスター選手がたどってきたような晩年の劣化を迎えている。これが私にはなんとも感慨深く、身震いするような色気を感じてしまう。イチローは衰えた姿にも価値があるのだ。

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