「ビールを50杯飲んでおけば」と笑った豪快エピソード
1981年9月3日の西武戦、同点の九回裏、高井さんは左腕のリリーフエース・永射保と対峙した。カウント0―1からの2球目、モーションに入った永射のグラブの親指付近が、体に近づくことなく真っすぐ下りてきた。
「ストレートやな」
内角低めに切れ込んできた速球にバットが一閃すると、通算27本目となる代打本塁打がライナーとなって左翼スタンドに吸い込まれていった。ひと振り人生を締めくくる、鮮やかなサヨナラ弾だった。
「そういえば」と、高井さんは言った。
「1年だけプレーしたノンプロ時代、都市対抗の地区予選で負けて、名古屋のビアガーデンで残念会をやったんですわ。わしは給料1万円程度で、まだ18歳。ビールなんか飲んだことなかったけど、これがうまくてね。気がついたら中ジョッキを26杯も飲んでしまった。で、腹が減っていたので、27杯目をメシにかけてお茶漬け代わりにして食ったんですわ。だから、代打のホームランも27本で止まったのかもしれんね。50杯ぐらい飲んどけばよかった(笑い)」