東アジアE-1選手権V逃す 森保一「監督兼務」には無理あり
12月10日から18日まで韓国・釜山で開催されたアジアEー1選手権で2位に終わった森保一監督に対して、ファンから厳しい意見が噴出している。というのも2度目の優勝のチャンスがありながら、第3戦でライバル韓国相手に完敗を喫したからだ。さらに試合後の森保監督のコメントへの批判も目についた。
「試合の入りのところで相手の圧力に押され、なかなか主導権を握れずに先制点を許し、相手に余裕を与えてしまったところは反省しなければいけません」「選手たちも少しタイミングが遅れたり、強度の部分で足りなかったり、局面で相手に上回られてしまったかな、と思っています。今回の経験を経験の浅い選手たちには、次の成長につなげて欲しいと思います」
こういった具合に敗因を<選手の経験不足に起因している>ような発言を行ったからである。
最後に「選手ができなかったということは、私の伝え方というところで監督として反省しないといけません」と敗戦を自分自身の責任にしたとはいえ、選手に対する指摘は具体的だったのに比べて、監督としての責任は<伝え方>のひと言で片づけてしまったことも批判の対象になった。
■理想だったのはオシム元監督
A代表と五輪の監督を兼務して以来、森保監督はメディアに対して正直に話してきた。ただし正直であるがゆえにスポーツ紙などは「面白味がない」と冷ややかな姿勢で距離を置いてきた。
A代表が海外に遠征すれば、彼らは毎日記事を書かなければならない。そんな時に<真面目な話ばかり>では、なかなか読者の目を引くような記事に仕上がらないからだ。
たとえばハリルホジッチ元監督のように日本サッカー協会に批判的な意見を話したり、トルシエ元監督のように朝令暮改のコメントを出しても意に介さないタイプだと原稿も書きやすい。しかしながら原稿を書きやすい監督=良い監督とは限らない。理想を言うならば、監督として経験が豊富で数々の修羅場をくぐり抜け、発言にも蘊蓄のあるオシム元監督が、理想的な監督だったと言える。
本題に戻ろう。
森保監督はA代表はもちろん、五輪の監督の経験もなかった。手探りのチーム作りを続けているが、2022年カタールW杯は最終予選まで時間はあっても、東京五輪のチーム作りに関しては、時間的に悠長なことを言っている場合ではない。
「いつまで代表候補のラージグループ作りをしているのか? そろそろチームのベースを固める時期ではないだろうか?」と言いたくなる。
監督に就任したばかりの2018年8月。森保監督は、ジャカルタで開催されたアジア大会でUー21(21歳以下)代表の指揮を執ったが、その後はA代表に専念してU-21代表やU-22(22歳以下)代表は、A代表の横内昭典コーチが監督代行として指揮を執った。
森保監督がU-22代表の監督を務めたのは、11月のU-22コロンビア戦が約1年ぶりのことだった。しかも0-2の完敗劇。これでは<森保監督はA代表に専念。五輪代表は総監督としてサポート役に徹する。五輪代表の監督は選手を把握している横内コーチを正式に昇格させる>という意見が出るのも当然だろう。
五輪代表は、年の瀬の28日にUー22ジャマイカ代表と対戦した後、2020年1月にタイで開催されるUー23(23歳以下)アジア選手権に挑む。
この期間はA代表の活動がなく、森保監督も五輪代表に専念できるとはいえ、20日に発表された<2020年の代表チーム活動カレンダー>を見ると今後、A代表と五輪代表両チームの活動時期は重なっている。
3月、A代表は26日にW杯アジア2次予選のミャンマー戦をホームで行い、31日にはアウェーでのモンゴル戦が控えている。一方の五輪代表は27日、30日に国際親善試合が組まれている。さらに6月もA代表は4日と9日にタジキスタン、キルギスをホームに迎え撃つが、その時期に五輪代表はトゥーロン国際大会参加でフランスに向かう。
いつものことだが、このトゥーロン国際大会を経て五輪本大会に臨む18名を(オーバーエイジ枠を含めて)決めてきた。来年は7月に入るとキャンプを重ねて17日にテストマッチを行い、そして五輪本番(7月23日~)を迎える。
■五輪代表監督をバトンタッチするならいつ?
W杯2次予選突破は至上命令とはいえ、足をすくわれる可能性は極めて低い。だからといってA代表の指揮権を横内コーチらスタッフに任せることは絶対にできない。
森保監督の体はひとつしかない。となればA代表、五輪代表を同時に率いることには、誰が考えても無理がある。
もし五輪代表の監督を誰かにバトンタッチするとしたら、どのタイミングがベストだろうか?
答えは明白だろう。新しい指揮官が、長期間にわたって選手を指導できるタイでのU-23アジア選手権が理想的だし、なおかつ最後のチャンスでもある。
東京五輪で本気でメダルを狙うなら、やはり監督交代しかないと思う。
関塚隆JFA技術委員長か、あるいは田嶋幸三JFA会長が英断を下すことができるか?
メダルの成否は、彼らJFA幹部の判断にかかっている。