佐々木「夢の170キロ」に大騒ぎ 執拗に球速を求める危うさ
「投手にとって、球速が大きな武器になるのは事実です。けれども、球速を追い求めるあまり、制球が乱れては意味がないでしょう」と、現役時代に完全試合を達成した巨人OBで評論家の高橋善正氏はこう言う。
「たとえ200キロの球を投げても、ストライクゾーンに行かなければただのボール球です。最近のプロ野球を見ても、投手が平気でホームベースの手前でワンバウンドする球を投げる。捕手が外角に要求しているのに内角に投げる逆球なんてまだ序の口、フルカウントから打者の頭部付近に投げる投手もいます。
少年野球のころから、速い球を投げるのがいい投手だと刷り込まれる弊害で、投手は狙った場所に投げる意識が希薄なのです。球速にこだわれば10割の力で投げなければならないわけで、いきおいフォームも崩れる。投げ方が乱れているのだから、狙ったところに投げられるはずがありません」
■逆球の経験は「片手くらい」
例えば、メジャーで12年連続2ケタ勝利を継続中のサイ・ヤング賞投手、グレインキー(36=アストロズ)の速球の平均球速は145キロ。メジャー平均(約150キロ)を5キロも下回っているのに勝ち星をコンスタントに重ねられるのは、多彩な変化球も含めて内外角にきちんと投げ分けられる制球力があるからだ。速球の平均球速148キロ、同様にメジャー平均を下回っている前田健太(31=ドジャース)が今季、強豪チームの先発3番手に抜擢されそうなのも何より制球が安定していることが大きい。