アンダーシャツに拡声器…サイン盗みはメジャー史の一部だ
インディアンスは1959年から60年にかけてセンターのスコアボードの中にスパイ要員を忍ばせ、解読したサインをその職員がブザーを鳴らした回数で伝えるという方法をとっていた。1回鳴ると速球、2回鳴るとカーブ、3回鳴るとチェンジアップだった。ブザーは打者が聞き取れるくらいの音量だった。
女スパイを使う球団もあった。ジャイアンツが、まだニューヨークのチームだったころ、マグロー監督は球場に隣接したビルの最上階に、やさしい声をした小柄な女性を置き、そこから望遠鏡で捕手のサインを読み取らせ、日よけを開閉した回数で打者に球種を知らせていた。
マーリンズ、パドレスなどで監督を務めたジャック・マキーオンは、3Aの監督時代にピッチャーのアンダーシャツに極小スピーカーを忍ばせ、相手の監督や三塁コーチが一塁走者に送ったサインを読み取って「盗塁のサインが出た。牽制球で刺せ」「エンドランでくる。インサイドに投げろ」と声で指示していた。音量は投手にしか聞こえない程度に調整してあった。ある時、マイクの調子がおかしいので、テストのつもりでタクシー会社の配車係のまねをして「車両番号99番、ダベンポートホテルにご婦人を迎えに行ってください」と言ったところ、ピッチャーがマウンドを降りてそのホテルに行きかけたので大いに慌てたという。