元参謀が見た“勝負師”野村克也 日本Sで執念のイチロー封じ

公開日: 更新日:

 野村克也さんとは、南海時代から半世紀のお付き合いとなったが、改めて思い出すのは昭和44年(1969年)、私のプロ1年目の高知キャンプだ。桂月別館という旅館の大広間で素振りをしているとき、野村さんが数人の記者を伴いやってきた。前年まで8年連続本塁打王、昭和40年には戦後初の三冠王になった大打者だ。一瞬でその場の雰囲気がピリっとした。

 野村さんはそこで、バットをへその前で畳と平行に持ち、息を止めて腰を左右に振り出した。上半身は一切動かさず、腰の動きだけでスイングする。これが噂に聞いていた「地獄振り」だった。

 野村さんは腰の動きが速い。数えてはいないが、おそらく50回ぐらいはバットが行き来したはずだ。私も真似してやってみた。息を止めているので力んでしまい腰が思うように動かせない。苦しくて10回もできなかった。

「バットは腰で振るものだ」

 大打者の野村さんはそれを目の前で実演してくれた。

 オープン戦に帯同を許されたときには、勝負師の別の顔を見た。地方での試合後、夜の11時頃に1人で大浴場に浸かっていたときだ。そこへ、肩をすべめて「寒い 寒い」と言いながら野村さんが入ってきた。

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…