元参謀が見た“勝負師”野村克也 日本Sで執念のイチロー封じ

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 野村克也さんとは、南海時代から半世紀のお付き合いとなったが、改めて思い出すのは昭和44年(1969年)、私のプロ1年目の高知キャンプだ。桂月別館という旅館の大広間で素振りをしているとき、野村さんが数人の記者を伴いやってきた。前年まで8年連続本塁打王、昭和40年には戦後初の三冠王になった大打者だ。一瞬でその場の雰囲気がピリっとした。

 野村さんはそこで、バットをへその前で畳と平行に持ち、息を止めて腰を左右に振り出した。上半身は一切動かさず、腰の動きだけでスイングする。これが噂に聞いていた「地獄振り」だった。

 野村さんは腰の動きが速い。数えてはいないが、おそらく50回ぐらいはバットが行き来したはずだ。私も真似してやってみた。息を止めているので力んでしまい腰が思うように動かせない。苦しくて10回もできなかった。

「バットは腰で振るものだ」

 大打者の野村さんはそれを目の前で実演してくれた。

 オープン戦に帯同を許されたときには、勝負師の別の顔を見た。地方での試合後、夜の11時頃に1人で大浴場に浸かっていたときだ。そこへ、肩をすべめて「寒い 寒い」と言いながら野村さんが入ってきた。

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