著者のコラム一覧
山田一仁フォトジャーナリスト

1957年1月1日生まれ。岐阜県出身。千葉大工学部画像工学科卒業後、文藝春秋社に入社。フリーランスとして五輪はロス、ソウル、バルセロナ、シドニー、カルガリ、リレハンメルなど取材。サッカーW杯は1990年イタリア大会から、ユーロは1996年英国大会から取材。89年のベルリンの壁、ルーマニア革命、91年ソ連クーデター、93年ロシア内紛、95年チェチェン紛争など現地取材。英プレミアリーグの撮影ライセンスを日本人フリーランスカメラマンとして唯一保有。Jリーグ岐阜のオフィシャルカメラマンを務めている。

リバプールにまた悲劇を悼む記念碑が建てられないよう祈る

公開日: 更新日:

ガランとしたエティハドスタジアム

 昨季のリーグ王者であるマンチェスター・シティの本拠地エティハドスタジアムに向かった。途中にサッカー場が20面ほどある大きな公園に立ち寄ってみたが、ほとんど人がいない。スタジアムも警備員がいるだけで周辺に誰もいない。

 マンチェスター・ユナイテッドの本拠地オールドトラフォードに向かった。ここもシーンとしている。スタジアム正面の向かいに大物OBであるジョージ・ベスト、ボビー・チャールトン、デニス・ローが並んで立っている銅像がある。

 今の新型コロナの苦境を知ったら、彼らは何と言うのだろうか?

 リバプールに向かう途中、道路の上を見ると電光掲示板に「Thank you to our amazing NHS staff」と書かれている。この危機的状況にあって昼夜を問わず、国民のために新型コロナに感染した人たちの治療に奮闘しているNHS(国民保健センター)のメンバーを讃えるサインなのだ。

 本当にそうだ。日本の皆んなも医療従事者にもっと感謝の意を伝えるべきだ。こういうムーブメントを市民レベルで起こし、東日本大震災の時のように国民が一致団結するときではないか。

 長年のイングランド暮らしで、この国ならではの嫌な部分も目に付くようになったが、こういう情景を見ると、さすがは先進国と尊敬の念を抱かざるを得ない。

 日没前にリバプールに到着した。リバプールの本拠地アンフィールドの周辺は人影もまばら。初めて見る光景である。

 このクラブは悲劇に二度、見舞われている。1985年、ユベントス相手にベルギーで行われた欧州CL決勝の試合前、サポーター同士の衝突で死者39名が出た<ヘイゼルの悲劇>。もうひとつは1989年、ノッティンガム・フォレストとのFAカップ準決勝の試合中、96人が圧死した<ヒルズボロの悲劇>。

 スタジアムの正面にリバプールの最初の黄金時代を築いたビル・シャンクリーの銅像が立っている。よくよく見ると口元が白いマスクで覆われていた。新型コロナがさらに猛威をふるい、新たな悲劇を悼む記念碑が建てられないことを祈る。

 銅像の近くには、試合前にサポーターが大合唱する歌の一節「You'll never walk alone」の文字が掲げられている。

 意味は「君は一人じゃない。僕たちがついているよ」と選手たちを鼓舞し、スタジアムに一体感をもたらすのにピッタリの曲である。しかしながら新型コロナが蔓延している今は……。リバプールだけでなくイギリス全体が、いや世界中が手を取り合って助け合うときなのである。

<あなたは一人で歩いていくんじゃない>

<あなたは一人ぼっちじゃない>

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