マー君の去就にも影響必至…ヤンキースにサイン盗み疑惑
選手会に労使協議を打ち切られたMLBのロブ・マンフレッド・コミッショナーが今季の中止を示唆するなど、いまだ開幕のメドすら立たないのに、早くも今オフの動向が注目され始めた。
今季終了後に7年契約が満了、FAとなるヤンキースの右腕・田中将大(31)のことだ。
地元紙「ニューヨーク・ポスト」(電子版)は14日(日本時間15日)、読者の質問に番記者が答えるQ&Aを掲載。田中に加え、オフにFAとなるハップ(37)とパクストン(31)の両左腕の去就を報じている。
田中に関しては、2014年にヤンキースに入団して以来、安定した成績を残してきた(164試合で75勝43敗、防御率3.75)ことなどを根拠に、「彼の入念な準備や浮き沈みのない人間性は首脳陣に高く評価されている」と、残留に向けた交渉が行われるだろうとの見解を示した。
一方、同日の「トレード・ルーモア」(電子版)は、田中と左腕2人がいずれも30代で、再契約には年齢がネックになると指摘。オフに9年総額約350億円で獲得したコール(29=前アストロズ)、セベリーノ(26)の両右腕を軸に若返りを図るため、30代の3人との再契約は微妙としている。
■精度の落ちたスプリット
田中は昨季、レッドソックス戦でこっぴどくやられた(敵地フェンウェイパークでは2試合で0勝1敗、防御率19.64)こともあり、11勝9敗ながら防御率4.45と、17年(4.74)以来2年ぶりの防御率4点台に終わった。
田中はメジャー8年目もピンストライプのユニホームに袖を通すことができるのか。
「ヤンキースが田中と再契約する可能性は低いと思います」と、スポーツライターの友成那智氏がこう続ける。
「昨季は特に顕著でしたが、スプリットの精度が年々、落ちています。渡米以来、捕手が捕球にてこずるようなスプリットで相手打者を封じてきましたが、昨季は落差がなく、ツーシームと見分けがつかないほどでした。スプリットが効果的に使えないため、スライダー一辺倒の単調な投球になってつかまることも珍しくなかった。ヤンキースはスタントンやコールらと長期にわたる大型契約を交わしており、予算面を考慮しても田中を好条件で引き留めるとは考えにくい。ポストシーズンの強さ(8試合で5勝3敗、防御率1.76)を評価される可能性はありますが、残留する確率は3割程度とみています」
キャッシュマンGMの去就
戦力面での評価が芳しくない上に、ここにきて田中の去就に影響を及ぼしかねない重大な疑惑が浮上した。
アストロズ、レッドソックス同様、ヤンキースもサイン盗みをやっていた疑いがあるのだ。
米ウェブサイト「ジ・アスレチック」によれば、ニューヨーク州地方裁判所の判事が、17年にマンフレッド・コミッショナーがヤンキースへ送った書簡を公開するよう通達。この書簡には、ヤンキースのサイン盗みの詳細が記されているそうで、これが明らかになれば、レ軍やア軍のような全米を揺るがす大スキャンダルに発展しかねないという。
レッドソックスやアストロズはGMや監督を解任。ドラフト指名権を剥奪された上、高額な罰金など重いペナルティーを科された。ヤンキースによるサイン盗みが悪質なら、GMや監督の責任が問われるのは必至。当時はジラルディ監督(現フィリーズ監督)が指揮を執っていてブーン現監督は無関係だが、長らくチームを統括する立場にあるブライアン・キャッシュマンGMの責任は免れない。
同GMは田中にとって後ろ盾ともいうべき存在だ。13年オフに7年総額約166億円を投じて田中を獲得。田中が15年から3年連続で開幕投手を務めたのも、同GMがエース級と位置付けていたことが大きかった。
「ヤンキースは毎年、湯水のごとく大金を使って選手を補強しながら、01年以降、ワールドシリーズを勝ったのは09年の1回だけ。補強責任者のキャッシュマンがドブに捨てたカネは数え切れませんよ。それでいて自身は年俸5億円を超す高給取りですからね。高校の同級生であるハル・スタインブレナー・オーナーの覚えがめでたいからですが、本来ならとっくにクビを切られていても不思議ではない。サイン盗み疑惑が事実なら、オーナーもさすがにかばい切れないのではないか」とは特派員のひとり。
キャッシュマンGMのクビが飛べば、チームの若返り方針もあってベテランの田中の立場は苦しくなる。サイン盗み疑惑をだれより心配しているのは田中かもしれない。