阪神「地獄の13連戦×2」と大騒ぎ…MLBなら鼻で笑う軽々しさ
時差に長距離移動
移動も過酷だ。米国本土には東部時間、中部時間、西部時間、太平洋時間の4つの標準時間がある。
例えば、東海岸のニューヨークと西海岸に位置するロサンゼルスには3時間の時差がある。普通ならばデーゲーム後に長距離移動をして翌日はオフにするのだが、日程によってはそれができないこともある。メジャーは最多で20連戦。その間に長距離移動が入ることもしばしばある。
セットアッパーとしてレッドソックスで2007年の世界一に貢献した岡島秀樹氏(現評論家)によれば、苦労したのは西海岸から東海岸への移動。東は西よりも時計が3時間進んでいるため、体内時計が狂い、意識がもうろうとしたままマウンドに上がることもあったという。
マーリンズのように、カナダ・トロントでのブルージェイズ戦後、本拠地フロリダ州マイアミへの約2391キロ(約3時間)のフライトを強いられるチームもあるし、ニューヨーク・ヤンキースやボストン・レッドソックスがマリナーズのホームであるシアトルに遠征に行けば飛行時間は約6時間だ。
■酷暑に氷点下
気温変化の激しさもコンディション調整に影響を及ぼす。
「フロリダは亜熱帯で、マーリンズは40度近い気温の中で試合をするので、まさに地獄。一方、シカゴのように、4月ごろには氷点下まで冷え込む球場も珍しくない。米国は国土が広い分、さまざまな状況に適応しなくてはいけません」(前出の友成氏)
例年のプロ野球は毎週月曜日はお休み。雨が降ればすぐ中止。ゲームセットが深夜2時なんてあり得ない。コロナ禍で試合日程が少々ハードになったといって、軽々しく「地獄」と呼ぶのはいかがなものか。
そんな甘ちゃんなマスコミにクギを刺したのが、かつて阪神を率いた星野仙一監督だ。阪神が高校野球に甲子園を貸す8月の長期遠征をマスコミが「死のロード」と呼ぶことについて「もう死のロードは死語や」と怒ったことがある。
それはそうだろう。高校野球が行われる間には京セラドームでの主催試合があるので自宅に戻れる。遠征に出ても巨人、中日戦はドーム球場。移動の新幹線や宿舎のホテルには冷房が完備されている。昔の長期遠征とは天と地の差がある。選手が甘えるから「いつまでも死のロードなんて呼ぶな」というわけだ。
シーズンが短縮され、移動の負担も軽減されるとはいえ、今季もメジャーは7球団に20連戦が待っている。「地獄の13連戦が2回」と聞いたメジャーリーガーは鼻で笑うだろう。