1強5弱のセで加速する巨人依存…現場もフロントも独壇場
セの公式戦は約40試合を残して巨人が独走。22日の広島戦はサヨナラ勝ちを収め、マジック30となり、最短で10月12日にも、巨人の2年連続の優勝が決まる。
巨人はライバル5球団全てに勝ち越しているように、投打で圧倒している。某球団OBは、「エースの菅野が開幕11連勝を達成、リーグ最少の21失策と、守りの野球をする一方で、打線の方は、打撃30傑に入っている選手は坂本と岡本、丸の3人だけ。経験の浅い若手も多く、決して付け入るスキがないわけではないはずですが、他の5球団は巨人に対して腰が引けている」と、こう指摘する。
■死球は12球団最少
「中でも死球数に如実に表れています。巨人の死球数は12個。これは他の5球団の半分以下(最多は阪神の27個)です。岡本とウィーラーは2個で、坂本、丸に至ってはゼロ。さらに四球数はリーグ2位の281個。いかにセの投手が巨人打線に厳しい攻めをしていないかということがよくわかる」
しかも、巨人の与死球はリーグトップの34個。厳しく攻めず、むしろ攻め立てられているありさまだ。
「巨人は優勝した昨季、死球数は47個でリーグ4位、与死球数は58個でリーグトップだった。巨人に対しては最初から白旗を揚げているようなもの。かつて、原巨人が優勝を逃した2011年の死球数はリーグ3位の55個、2015年はリーグ最多の52個だった。巨人に対して臆さず攻めていたことが、勝利につながった側面もあります」(前出のOB)
巨人に対抗するための補強も、ほぼ皆無だ。このシーズン中、巨人は楽天からウィーラーと高梨をトレードで取り、ロッテには実績のある沢村を放出、若手の香月を獲得するなど3件のトレードを行った。その一方で、セの5球団といえば、ヤクルトがBC香川から右腕の歳内を獲得、阪神がオリックスとトレードを行っただけである。
■6・19開幕も主導
グラウンド内外で巨人にやられっぱなしのセの5球団だが、コロナ禍における球団経営においても、巨人頼みの傾向が出てきているという。球界関係者が明かす。
「公式戦の6月19日開幕決定の際には、巨人が率先して動いた。Jリーグとのコロナ対策合同会議の大枠をつくり、斉藤コミッショナーが政府など関係各所との調整役となった。セは選手の今季年俸を保証し、CSを中止してでも公式戦の120試合開催を主張。巨人が主導し、セの5球団はそれに追従した格好です。パでは、コロナ禍での早期開幕には消極的で、選手年俸の減額の必要性を訴えた球団もいくつかあった。経営面への配慮から、ファイナルステージのみCSを行う。対照的な動きになった」
セはCSを中止したことで、今季は40試合を残して事実上の「消化試合」となった。CSを開催していれば、阪神とDeNAによる2位争いも、注目を集めたはずだ。
そもそもセが120試合維持にこだわったのは、コロナ禍で入場料収入が望めない中、放映権料を含めたスポンサー収入を重視したからだといわれている。パの球団関係者が言う。
「セは今年から、エネルギー事業会社のJERAと冠スポンサー契約を結んだ。巨人は昨年から、インターネット配信のDAZN(ダゾーン)とスポンサー契約を締結。試合の配信だけでなく、球団のオフィシャルスポンサーに就くことで、巨人は年間20億円ともいわれる収入を得ている。試合数が少なくなれば、スポンサー契約の見直しを迫られかねないし、地方局によるテレビ中継を含めた放映権料はその分だけ目減りします」
コロナ禍での行動力
セでは、地元放送局との関係を重視する広島のみ、DAZNと契約していないが、リーグ全体としては巨人の120試合制の提案は、渡りに船だったといっていい。
「かつては1試合1億円といわれた地上波の巨人戦中継がここ10年間でほぼ消滅し、各球団は入場料やグッズ収入の増加に取り組み、成果を上げてきた。しかし、コロナ禍によって球団経営は大打撃を受け、回復の起爆剤を見つけることは難しい。一度は見送られた野球くじが再検討される可能性もある。いずれにせよ、セでは実務者レベルの会議に至るまで、巨人が主導権を握りつつある。球団のコロナ対応や選手の年俸問題など、セの球団は巨人のやり方を参考にしている。コロナ禍で行動力を発揮する巨人に対するこれといった対案があるわけでもなく、後ろをついていかざるを得ないのです」(前出の球団関係者)
現場もフロントも巨人の独壇場。セの「巨人1強」が加速しそうな勢いだが、これに大喜びするのは巨人ファンだけ。5球団はせめて残り試合、全力でぶつかるくらいでないと、ペナントへの興味はますます薄れ、ファン離れにつながらないとも限らない。