アテネ五輪の表彰台で聞いたメロディーだけの「君が代」
オーストラリアとの準決勝に敗れ、どん底にいた僕らを救ってくれた長嶋監督からのFAX。長嶋監督を勇気づけるためにと戦ってきた日本代表が、最後は逆に励まされ、翌日の3位決定戦に向けて立ち上がれたのです。相手は強豪カナダ。しかし、すべての重荷から解放された日本代表は11―2で圧勝し、銅メダルを手にすることができました。
それまではむしろ相手より重圧と戦ってきた僕らにすれば、五輪の舞台を初めて実感できたのがこの3位決定戦です。選手もコーチ陣も、中畑監督代行も少年のように目を輝かせ、最後の一球まで野球を楽しめた。そんな最後の試合、中畑監督代行と大野豊投手コーチが「マサ、行こう!」と九回のマウンドを託してくれました。
先頭打者をセンターフライに打ち取ると、続く打者をライトフライ。そして最後も右翼に高く上がった打球を福留孝介がグラブに収め、日本の3位、銅メダルが決定しました。
ファンのみなさんが期待していた色のメダルではありませんでしたけど、もし、長嶋監督からのねぎらいのFAXがなければ、ここまで伸び伸びと野球ができたかどうか。僕はこの時、表彰台で流れた「君が代」を今でも鮮明に覚えています。