テコンドー山田美諭 大ケガから復活した「日本最強女子」

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ケガに泣かされ46キロまで体重激減

 だが、国内最強の名をほしいままにして卒業を間近に控えた2016年1月に、それは起きた。リオ五輪アジア予選大会に出場する日本代表を決める最終選考会に臨んだが、準決勝で靱帯を断裂する大ケガを負ったのだ。当然、試合に敗れ、積年の夢はつゆと消えた。「何日も泣いていました」と、山田は当時をこう振り返る。

「自分がこの大会で優勝して、(五輪出場が懸かった)大陸予選に出るんだと思っていたのに、なぜこのタイミングなのか。そして、1年間も競技を離れてリハビリすることも自分の中で受け入れられませんでした。周りの反応も変わりましたね。話している相手が『山田はもうダメだ』と思っていることが、なんとなく伝わってくるんです。実際、そんな声が耳にも入ってきた。食欲も湧かなくて、普段は54キロくらいの体重が46キロまで減りました」

 無念の思いを抱えて迎えた同年4月に城北信用金庫に就職。しかし、山田の気持ちは切れなかった。「もうダメだ」という周囲の声をはね返すべくリハビリに励み、勝負の世界に舞い戻った。

 17年から3年連続で再び日本一に返り咲くと、今年2月9日に行われた東京五輪最終選考会で優勝。悲願の五輪切符を手に入れた。

「周りの支えが本当に大きかったです。両親や監督、そしてケガをしても受け入れてくれた城北信用金庫に恩返しがしたい、その一心でした。東京五輪は延期となりましたが、コロナ禍で大変な状況の中で変わらぬサポートをしてくれる会社、それを下支えする他の職員の方々に改めて感謝の気持ちを感じます。私も職員の一員として、五輪で金メダルを取ることで会社に貢献したい気持ちが強まりました」

■延期された1年でグレードアップ

 コロナ禍で得た新たな1年間は、山田にとってプラスになっているという。海外遠征ができない今、軽量級の男子選手を相手に練習する機会も生まれた。それに加え、従来は左に構え、左足から繰り出す蹴り技を得意としてきたが、新スタイルを模索。来夏に照準を定め、以前から構想にあったという反対側の構えや、回転技を新たに習得中である。

「私の武器が左足ということは世界中にバレています。だから、『あれ、こんな選手だったかな』と思われるくらい、今までとは違ったスタイルを見せていけたらなと思っています」

 “蝶のように舞い、蜂のように刺す”山田の美技に注目だ。

▽やまだ・みゆ 1993年12月13日、愛知県瀬戸市生まれ。3歳から父の道場でコンタクト空手を習い、中学時代からテコンドーも並行して始めた。大東文化大時代は同じ大学に通う兄・勇磨さんと2人暮らしをしていた。これまで日本選手権を8度制している。

【連載】東京五輪目指す 女子アスリートの履歴書

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