虎ドラ1佐藤“外野構想”が矢野批判の火種に…OBは内野推し
早くも称賛を集めている。
阪神のドラフト1位新人、佐藤輝明(21=近大)がキャンプ初日から、フリー打撃で持ち前のパワーを発揮。柵越えは初日の9本に続き、キャンプ2日目の2日は25本に激増。角度のある打球が右へ左へ、高々と放物線を描いた。最後はバックスクリーンの上に“着弾”する大飛球を放つなど、矢野監督も規格外のパワーに感嘆しきりだ。
CS放送の解説を務める阪神OBの掛布雅之氏も、「飛距離がすごい」「バットを内側に入れようと意識しているように見える」「打球がよく上がるし、逆方向にも打てる」と大絶賛。踏み出す右足の使い方など、フォームの課題を指摘する声があるものの、アマ球界ナンバーワン野手として、昨秋ドラフトで4球団が競合した大器の片鱗を存分に見せている。
そんな佐藤輝を巡り、グラウンド外では早くも、守備位置を巡る論争が起きている。大学時代の本職は三塁だが、三塁には昨季28本塁打の主砲・大山がいる。矢野監督は佐藤輝の打撃を生かす意味もあり、外野起用の構想を掲げている。
■掛布氏、岡田氏、真弓氏が
この日のシートノックでは外野に入り、強肩を連発したものの、プロでは内野手として勝負したい意思は捨てていない。キャンプには外野用のグラブだけでなく、内野用、ファーストミットも持参。内野手としてアピールする機会を虎視眈々とうかがう中、チャンスは早速やってきた。キャンプ初日の内野ノックで大山とともに三塁に入り、軽快な守備を披露。現役時代は三塁手だった前出の掛布氏は、「もっと腰高と思っていたが、腰を割って捕れていた。肩が強く、スローイングも安定。大山に見劣りしないし、三塁を十分に守れる」と評価した。
「掛布さんのコメントはあながちリップサービスとは言い切れません」と、阪神OBがこう続ける。
「佐藤は大学時代、外野手としてスタートしたものの、三塁の方が経験豊富。守備には定評があり、187センチと大柄ながら、グラブさばきは柔らかく、スローイングもクセがない。プロのスカウトからは、二塁や遊撃でもやれると評価する声もあった。昨秋ドラフトで佐藤を1位入札したソフトバンクは、『ポスト松田』と位置づけ、三塁手として育てる方針があった。むしろ、外野の方が不慣れなだけでなく、一度、外野に専念してしまえば、内野に復帰することは難しい。多くのプロ関係者は『外野ではもったいない』と思っています」
実際、阪神の大物OBはこぞって、内野起用をプッシュしている。
前出の掛布氏は、2日付のスポーツ報知で「外野でスタートすると内野には戻りにくい。将来のことを考えると三塁、一塁で勝負させたい」とした。
1月26日付のデイリースポーツでは、元監督の岡田彰布氏が「まずは打つことが大前提」と前置きしつつ、「最初は大山と三塁で勝負させて、ホンマにレギュラーを張れるだけのバッティングがあるなら、そのまま三塁でもいいし、他に一塁でも外野でも考えていけばいい」と指摘した。
同じく監督経験者の真弓明信氏も1月31日付の日刊スポーツ(WEB)で、ロハスら新助っ人の合流が遅れる上に、「外国人は必ずしも1年間働いてくれるとは限らない」とした上で、「一塁はサンズ、マルテがいるが、そこまで盤石だろうか。何度か提言しているが、ルーキーの佐藤輝は大学で内野の経験があるので、外野で起用するのはもったいない。一塁ならば、20年近く守ってくれるだろう」と分析した。
サンズ一塁コンバートの不安
前出の阪神OBは、「実際問題として、矢野監督は佐藤の外野構想を持ちつづけられるのか」と、こう続ける。
「今季は新助っ人のロハスを左翼で起用し、昨季は主に左翼を守ったサンズを一塁へコンバートする方針。サンズとマルテのどちらかを一塁起用するようです。サンズは米球界で一塁経験があるとはいっても、米球界よりも細かい野球をする日本で、きちんと一塁を守れるのか。一塁守備はサインプレーや外野との連係などもある。守備に神経を使えば、打撃にも影響しかねない。まして矢野監督は今季、川相臨時コーチを招聘するなど、3年連続12球団ワーストの失策数の改善に取り組んでいる。サンズやマルテが守備でチームの足を引っ張るようなら、起用法を再考せざるを得なくなります」
とはいえ、パワー不足の打線を考えれば、一発がある助っ人を簡単に外すわけにはいかないだろう。
「矢野監督が佐藤を外野で起用するのは大山が三塁にいるから。助っ人の一塁コンバート案がコケたからといって大山を一塁に回せば、矢野構想は看板倒れに終わるだけでなく、大山のモチベーションも低下しかねない。サンズは左翼に戻し、ロハスを右翼で起用。一塁には陽川や中谷が入る形になるのではないか。ただ、そうなると佐藤の出場機会が減ってしまう。黄金ルーキーを持て余す事態を招こうものなら、OBや評論家、メディアやファンから『佐藤を使え』『最初から三塁、一塁に専念させるべきだった』などと、矢野批判が噴出するのは必至です」(前出のOB)
矢野監督は、今季が3年契約の最終年。周囲は勝負の年と見ている。黄金ルーキーの起用が、自身の去就問題に大きな影響を及ぼすかもしれない。