先行き不透明な米経済が大リーグに与えるダメージの深刻さ
10年前に比べ、米国の企業の収益は名目上の数値で2割以上上昇しているのに対し、金利は2ポイント以上低くなっている。そのため、収益が目減りしたとしても企業には余力があり、金利も上昇の余地があることがうかがわれる。従って、株式相場で株価が乱高下することが大リーグの経営陣に大きな影響を与えることは、現時点では考えにくい。
しかしながら消費者心理の悪化が続く場合、人々は米国経済全体だけでなく自分の勤め先の経営状態や収入への不安から支出の見直しを行うことになる。この時、最初に吟味されるのが趣味や娯楽にかかる費用だ。
10ドル、20ドルといった比較的手頃な価格の座席を用意するだけでなく、300ドルから400ドルと高額な席も設けることで収益を確保するという大リーグの手法は、コロナ禍の前後で変わりがない。むしろ、昨年は公式戦が無観客であっただけに、今季は昨年の入場料収入も回収しようと、各球団は高水準の入場券料の見直しには消極的でさえある。
それだけに、これからも景気の先行きに不確実さが増すようなら、観客は家計維持のために支出のかさむ球場での観戦を諦めることになりかねないし、現在保有している年間入場券の更新を断念するかも知れない。
市場を完全に操ることは困難であり、消費者の心理も移ろいやすい。球団経営者たちに油断は許されないのである。